孤独死した40代女性「社会的孤立」が招いた悲劇 人との縁が薄れた孤独者をどう救えばいいか

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代表の古市さんたちは、まずは本人に会うことをとっかかりにして、ごみをすぐにどんどんと出すようなことはない。

古市さんは部屋に溢れるモノの中から、プロファイリングをして、その中に共通点となる「キーアイテム」を見つけようとする。

「その人にとって、手の届く目標が生まれると、優先順位が生まれる。例えば、生け花に興味を持っている人だったら、スペースが必要なので、もし邪魔だったら、あなたの好きにしてもいいし、この紙袋は捨ててもいい、というコミュニケーションが生まれる。その結果、モノを手放すという決定が自分で行えるようになるんです。それが、片付けるという目標に近づいていく。私たちはある目標を目指して、一緒に作業をするという仲間意識を持っています」

ゴミ屋敷を目の前にすると一見すると、いかに近隣住民に迷惑をかけないかに目がいきがちだが、本人にとっては片付ける動機付けが乏しくなってしまう。

環境をいきなり変えると大きなストレスに

「ある60代の女性は、かつてはアパレル店員でした。家にためた大量の洋服が捨てらずに、インターホンすら見つからない状態でした。私たちは、そのマンションに月2回の頻度で通ったんです。完全に生活できる状態になるまで、10か月以上を費しました。いきなりモノを全部運んで、環境が極端に変わってしまうと、それが本人のストレスになるため、10割片付けて、3割を戻すという作業を行ったんです」

孤独死の現場は、孤立し、誰にも助けを求められず、崩れ落ちてしまった現役世代の悲鳴に溢れている。古市さんのように、生前からアプローチすることが何よりも重要になってくる。実際、そのような努力の甲斐もあってか、近年、ゴミ屋敷やモノ屋敷の住人本人からの依頼も目立っている。また、予想外の効果として多いのが、清掃を介したコミュニケーションを経て、本人が人間関係を少しずつ取り戻す例だという。

『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

孤独死が1度起こると、近隣住民は「臭いを何とかしてくれ」と大騒ぎになってしまう。また事故物件となり、その原状回復には、多額の費用が必要になる。

例えば大手ハウスメーカーが、手がけた賃貸物件だと、その仕様に沿った建材を使用しなくてはならず、遺族に数百万もの費用が請求されるというケースも多く発生している。亡くなったご本人は、そのような人に迷惑をかける死は決して望んでいなかっただろう。

しかし、介護保険や地域の見守りなどが充実している高齢者と違って、現役世代の社会的孤立は完全に置き去りにされているといっても過言ではない。

国は、社会的孤立の重要性を認識し、早急に実態把握に乗り出してほしい。また、孤立した人の心に寄り添い力を尽くそうとする、民間の御用聞きのような取り組みを支援し、それが普及することで改善へとつながるのではないかと感じている。そして、何よりも私たち個人が一人ひとりこの問題に目を向けることが解決の糸口となるだろう。

菅野 久美子 ノンフィクション作家

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かんの・くみこ / Kumiko Kanno

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社で編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国』(双葉社)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(KADOKAWA)『母を捨てる』(プレジデント社)など。

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