マイナス表現を使わないことが人間関係の要 他人の悪口を絶対に言わない人こそ、他人の良い面を引き出せる

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絶対に人の悪口を言わない生き方

ところで私がこの学生さんに惹かれましたのは、ご自分の悲しかった経験から、たとえ友人のことでも、マイナス的な表現は本人のいないところでは絶対にしないと心に決めておられることです。これは社会生活ではとても重要なことで、しかも簡単なようでとても難しいことです。

私はある時期、藤田五郎(仮名・40歳男性)さんというお隣さんと、彼が転勤するまでの10年間ほどを近所づきあいしたことがあります。藤田さんの特徴は、絶対に他人の悪口を言わないことでした。彼の会社の同僚や部下がよく集い、その評判を耳にする機会は多かったのですが、10年の間誰ひとり、その評判に異を唱える人はいませんでした。

たとえば誰かが何かよくないことをしたとします。当然それを知る立場の藤田さんに事の真相を聞こうものなら、「自分も初耳だなぁ、全然知らなかったよ」と堂々とシラを切るか、「私はそこにいなかったから、何ともコメントできないなぁ」と答えは決まっています。潔いまでの「(陰口を含めて)自分が言われて嫌なことは他人にも言わない」主義の彼の生き方は、存在するだけで場を和ませたものです。

そんな藤田さん、私たちよりはるかに強い人のおもしろおかしい悪口は、「本当なの?」くらいの相槌は打って笑って聞き流しますが、そうではない人の悪口となるとたちまち不機嫌になって反論したり、席を外したりするなど徹底していました。

さりとて仏さまのような藤田さんとの会話は、綺麗ごとばかりで上辺だけの内容だったかといえば、そうではありません。こんな藤田さんですから寄せられる信頼は絶大で人が集まり、明るい話題やためになる話、人情話にはこと欠きませんでした。何を話しても上から目線の人、知ったかぶりをする人、他人の悪口をいうことで憂さ晴らしをする人など不愉快な人も多い中、藤田さんは思い出すだけで心を豊かにしてくれます。

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