シーサイドライン、他社と違う仕様が逆走招く? ケーブル断線しても「直前の状態を維持」

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断線箇所がみつかった場所(同型車両での位置)(写真:国土交通省)
事故車両の機器箱や端子台を取り外して配線をむき出しにした状態。断線したF線は結束から外れていたが、原因は調査中だ(写真:運輸安全委員会)

検討会では、F線が断線しているのに列車が動いたことについても報告された。

東京のゆりかもめ、大阪の南港ポートタウンなど他社では、F線の断線があった場合は、モーターに力を伝えることが不可能になる。断線直後には止まらないが、減速後に加速することができないため、どこかの状態で進行不能になる制御設計であることが、検討会で確認されている。

だが、横浜シーサイドラインの自動運転では、断線によって信号が伝わらない場合(電圧がかかっていない状態)に「以前の状態を維持」し続ける制御設計であることがわかった。

新杉田駅で停車した状態から説明すると、正常であれば地上から進行方向の切り換え命令が送られて金沢八景方向に進む。ところが、信号ケーブルが断線すると電圧がかからないため、進行方向を判断する列車内のVVVF制御装置は、前述の仕様によって進行方向は現状維持でよいと判断してしまう。そのため駅側の制御装置(駅ATO車上装置と駅ATO地上装置)は正常な状態であると認識し、列車が進み始めることになる。

他社とは違った仕様

列車は前進・後進の2方向しか進行方向がないため、無人自動運転の進行方向の動作は一般的に、F線とR線の次のような単純な組み合わせで決まる。

【F線とR線の組み合わせ】
F線無加圧R線無加圧:加速しない
※シーサイドラインの場合「以前の状態を維持」
F線加圧R線無加圧:前進
F線無加圧R線加圧:後進
F線加圧R線加圧:加速しない
 *加圧=ケーブルに電圧がかかった状態

ところが、横浜シーサイドラインの自動運転では、F線とR線が共に無加圧の場合の仕様が違っていた。なぜ他社のようなフェールセーフ設計がなされていなかったかは、今後の調査に委ねられている。同社はこの仕様を改善する。

検討会で推定原因が報告されたことで、現状でほかの無人自動運転の運行で行われている事故を受けた緊急対策は徐々に緩和されるが、シーサイドラインの自動運転再開は見通せない状況だ。

国交省鉄道局は、今後も事故防止検討会を断続的に開催して「無人運転の安全性をしっかり確保する」としている。今後は、F線とR線の断線以外に逆走が起きる可能性や、ほかのリスクを検討する。鉄道局はこの検討会を含めて、横浜シーサイドラインの対策の適正性を見極めていく予定だ。

中島 みなみ 記者

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なかじま みなみ / Minami Nakajima

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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