日本は「家族の限界」をどうやって打破するのか 個人、共働き、専業主婦家庭…それぞれの壁

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中野:私は2016年に経済産業省が設置した「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」の委員をしていたのですが、フリーランスの立場は弱く買いたたかれやすい。実際にはかなり準雇用関係的な立ち位置で仕事をしているにもかかわらず、労災や育休などの社会保障が利用できないことなどが課題として挙げられていました。厚生労働省の検討会に球を投げることになりましたが、年金の仕組みなどについてはかなり抜本的な改革が必要なので、どこまで変わるか。

筒井:社会保険も雇用者が有利ですからね。自営業の共済組合みたいなものが作れればいいのですけどね。

ITの活用で、もっと働きやすい仕組みに

中野:保険を使える枠組み、フリーランス協会のような緩いネットワークが出てきています。価格交渉面でも、クラウドソーシングのような領域では低価格競争になった時期があります。プラットフォーム企業が最低価格を設けるとか、プロジェクト自体は企業が高値で引き受けてから働き手に割り振るとか、さまざまな工夫をしはじめています。

前回記事でもITによる信頼システム構築の話が出ましたが、社会心理学の山岸俊男先生の『ネット評判社会』では、初期の頃のオークションなどを信頼のシステムとして評価するような記述もあります。もちろん信頼を積んだ後に裏切るような行為は防げませんが、ITを駆使した枠組みが進化することで、世襲やコネ社会より信頼できるような気がします。

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筒井:トータルで言えば絶対にそうですよね。新しい枠組みが導入されるとき、世の中には揚げ足取りをしたがる人たちがいるので、一見深刻な問題が起きたときに、全否定して潰していくような動きが出やすい。そこにひるまずやる必要がある。ニーズがあれば必ず進んでいくのではないかと思います。

中野:一方で、信頼をどんどん得られる人が強くなるような、信頼格差社会みたいになる懸念もありますか。

筒井:あるでしょうね。スタートラインをそろえて、公正の努力をする仕組みを作れるかだと思います。仕組み自体が悪いというよりは仕組みがうまく機能することが大事かな。あとは悪用されないように設計すること。システムは全部使いようだと思います。

中野 円佳 東京大学男女共同参画室特任助教

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なかの まどか / Madoka Nakano

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社入社。企業財務・経営、厚生労働政策等を取材。立命館大学大学院先端総合学術研究科で修士号取得、2015年よりフリージャーナリスト、東京大学大学院教育学研究科博士課程(比較教育社会学)を経て、2022年より東京大学男女共同参画室特任研究員、2023年より特任助教。過去に厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいのか』『教育大国シンガポール』等。

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