タレント事務所「インディーズ映画」参入の背景 広末、有村らの所属事務所が積極的に関与

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もちろんオファーをいただくのはありがたいことなのですが、そういう方のお話を聞いていると、正直、客寄せにしか思われていないのかなと思うことがある。仮にその話に乗ったとしても、その役者の本質や芯の部分が理解されないままだと、後々現場でも大事にされないんじゃないかと想像してしまう。でも自主映画の監督たちは、だいたいが純粋な気持ちから映画を撮ろうとしている人が多い。やはりそういう人たちと映画を作るのは面白いなと思うんです」。

徳永えりは、インディーズ映画の主演をきっかけにテレビドラマ「恋のツキ」の主役に起用されたという ©2019「月極オトコトモダチ」製作委員会

これらのインディーズ作品に出演することで、思わぬ反響もあるという。

「ミニシアター系の映画は、業界の方に多く観られているのだと思いました。とくにもの作りに熱く向き合っている方たちが観てくれている。そしてそういった映画を面白がっているクリエーターの方たちが、われわれに声をかけてくれて、もう一段上のフィールドに引き上げてくれることもあるんです。

例えば徳永は『疑惑とダンス』に出演したことで、主演ドラマの『恋のツキ』につながったり……。松本は『MATSUMOTO TRIBE』がきっかけで、二宮監督の新作映画『チワワちゃん』にも出演した。そうした面白いつながりができることがあるんだなと実感しました。もちろん本人たちの頑張りがあって、初めてそうなったことではありますが」

インディーズ映画は金の鉱脈

新人女優にとっても、インディーズ映画が修練の場として機能するということも大きい。「一定期間、お預けしても、その期間の対価はメジャー映画と比較すると伴わないこともありますが、それ以上の経験ができる。ある意味投資だと思っています」(辻村氏)。

東宝、松竹、東映といった大手映画会社が制作する作品で主役を務めるためには、出演者に知名度が求められる。そこに新人女優が入り込むのはなかなか難しい。だが低予算作品ならその可能性は広がっていく。

「大きい規模のメジャー作品は、スタッフさんがしっかりしていたり、スタッフさんの人数が多かったりするので、役者のケアをしっかりとしてくれるんです。だけど低予算の作品だとそうはいかない。僕が一緒に(カメラを載せる)レールを運んだりすることもあるくらいですから。

でもスタッフとの距離が近くて、一緒に映画を作っている感覚があります。うちの新人女優たちにも、10代のときにその感覚をもってくれたらと思っていまして。

俳優部といっても、撮影部、照明部、演出部といった数ある部署の中の1つでしかないので。一緒に作っていったほうが彼女たちも作り手の意図をくみ取れるようになれると思うんです。そういったことはインディーズならではのメリット。僕は、インディーズ映画は金の鉱脈だと思っています」(辻村氏)

インディーズ映画は、興行収入や公開規模といった点ではメジャー映画に及ばないが、芸能事務所にとってはそれだけではない魅力が詰まっているといえる。今後の業界の推移にも注目したい。

(文中一部敬称略)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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