ジリ貧の「地銀」はどうすれば浮上できるのか アメリカの証券会社の手法にヒントが

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しかし、だからこそ、地域の底上げに向けて汗をかき続けている。近年、信金・信組の存在がクローズアップされ、各地でその取り組みが注目されてきているのは、信金・信組が余裕を増したからではない。率直に言って、それは余裕がないからである。ただし、信金・信組には、自身が生きることの明確な原点があるのだ。

もっとも、歴史的に見て、たとえそれが明確ではないとしても、地方銀行の存在価値が乏しいということでは決してない。むしろ、地域の期待感は極めて大きいと言っていい。その資質も十分に備えている。何よりも優秀な人材がそろっている。したがって、地方銀行は地域の産業を創出していくだけの潜在力と高い能力について強い自信を持つべきである。

営業拠点のオールフロント化が可能に

その点、現在の経営環境は未曾有の厳しさと言えるだろうが、チャンスも到来している。それはデジタライゼーションである。デジタル技術の駆使によって、銀行業は圧倒的なコスト削減を実現できるに違いない。コスト構造を抜本的に変革して損益分岐点を大幅に引き下げれば、目先の収益積み上げに傾かざるをえないような状況から解放される。

デジタル化といえば、すぐにデジタルマネーによるキャッシュレス化やAIを生かした投資相談のロボアドバイザーなどが考えられがちだが、これらは象徴的なものであり、実態的には将来性はあやふやとも言える。

理由は簡単である。デジタルマネーの本格的な時代が到来すれば、銀行は現金回りの業務から解放されて、大幅なコスト削減が可能になることを期待できる。しかし、これは利用者が広範に利用することによって、その果実が得られるようになってからの話である。銀行が主体的に効果を実現できることではない。

実際、デジタルマネーを導入しても、その利用が本格化して、リアルマネー(紙幣など)の決済に取って代わるまでには相当の時間を要すると言われている。むしろ、銀行業がデジタル技術を導入して抜本的な改革を実現すべき分野は、銀行内部の構造である。地方銀行のなかでも伊予銀行など一部銀行がすでに着手しているデジタル技術を駆使した小型店舗化がその代表例だろう。

これは、デジタル技術が店舗の事務作業量を圧倒的に軽減させることで実現できている。言葉を換えると、営業拠点のオールフロント化(全員の営業力化)である。

こうした改革によって損益分岐点を大きく引き下げれば、営業現場には余裕が生まれるはずである。本部は過剰な営業目標を営業現場に課す必要性も後退するに違いない。

営業現場に営業目標達成へのプレッシャーが弱まれば余裕が生まれて、自身の店舗の地域が抱えているさまざまな問題、課題へと目が向いて、その解決に向けた腰を据えた取り組みができるようになるだろう。

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