人生100年時代には「人間とは何か」が問われる 「リンダ・グラットン×小泉進次郎」特別対談
小泉:僕の場合も、現実にはいつも楽しいわけじゃない。僕は若い人によく話すんです、どれだけ好きなことでも、仕事になれば絶対に嫌なことがある。でも、それに耐えられるのは、自分で選んだ道だからだ、と。
グラットン:その決断を促すためにも、政府がきちんと真実を伝える必要がありますね。世界各国の政府から話を聞きましたが、人々が長く働き続ける必要があるという物語を正面切って国民に伝えている政府はまだありません。伝えることで国民も備えることができるのに、です。
小泉:何がファクトで何がフェイクか、これをジャッジするのが非常に難しい時代です。政治でさえも本当のことを言っているのかが問われている。そんな中で、たとえ厳しいことでも正直に語っていくことですね。でも、多くの人は、苦しい話なんて聞きたくないんですよ。だから政治家も語りたがらない。
「人間とは何か」が問われる時代
小泉:僕には、政治家として絶対に忘れてならないことがあると考えています。それは、どんなに理論上正しいことでも、人の気持ちが動かなければ、絶対に動かないということ。だからつねに考えるんです。どのように届けたらいいのか。
グラットン:人間であるということは、未来へ向けての物語を持っているということでもありますからね。そして人間は、学ぶこと、探索することを求めます。子どもに限らず、人生を通して学んでいく。そこに人間と他の動物との違いがあるわけです。
そしてもう1つ大切なこと、それは、人間が他者とのつながりを持っていることです。家族、地域コミュニティーなどとのつながりですね。移行の時代においてこそ、そのつながりは重要になってくるでしょう。
世界では、日本の女性はあまり働いていないと思われていますが、それは誤解ですよね。どんどん職場に進出している。ただ、そこで単に社会に出るというだけではなく、家族や地域コミュニティーがきちんと機能するように制度設計をする必要があると思います。その点で、日本企業が果たせる役割はとても大きいですね。
私は、もっと企業が、人間は家族の一員であり、コミュニティーの一員であるのだという理解を深め、時間の再分配についてよく考える必要があると思っています。しかし、日本の企業の変化はあまりに遅すぎます。
小泉:僕もそう思います。65歳、70歳まで企業が抱え込んで、「退職おめでとう、お疲れさまでした」と手放されるのは厳しい。人生80年ならその後は年金で暮らせましたが、もうそういうわけにはいかない。いままでの幸せが、いまの不幸せにつながっているところがある。ぜひ経済界のみなさんにも、国が進めている人生100年時代への大きなシフトについて、一緒になって考えていただきたいと思います。
グラットンさんがおっしゃる「人間とは何か」に通ずることですが、僕は、みんなが「Who are you(あなたは誰ですか)?」と問われている時代だと思うんです。
選択を力に変えられるのか、それとも、選択を恐れて過去にしがみついてしまうのか。変化を前向きに捉えられるかどうかのカギは、「自分は何をしたいのか」を自分自身がしっかりわかっているかどうか、ではないでしょうか。
僕は、日本を変革の国にしたい。人口減少と人生100年時代を強みに変え、22世紀に向けた変革にスピードを上げて挑んでいきたい。
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