ジェネリック薬で初のカルテル、「主犯」は誰か 課徴金137万円、小さな談合事件の大きな意味

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このOD錠プロジェクトに関しては、コーアイセイにとって日本ケミファは、製造受託の仕事の発注者であり、販売力も持つ、いわば「生殺与奪の権」を握る存在だ。日本ケミファによる「談合の誘い」を断れば、ここでの大きな仕事を失うリスクがあった。両社の間に力関係の差があることを考えれば、問題ありだとわかっていても、日本ケミファの要請にコーアイセイが従わざるを得なかったと思われる。

公取委の公表資料からもわかるように、今回の談合事件は日本ケミファの主導で行われたことはほぼ明白だ。この後発薬を販売する会社が2社だけで、しかも圧倒的な力の差があったことが大きい。

後発薬で初のカルテル摘発に踏み切った公正取引委員会(撮影:梅谷秀司)

コーア商事HDは「内部統制委員会を設置して信頼回復に務める。具体的には決まっていないが、役員報酬のカットを含めて検討している」という。日本ケミファは6月7日に再発防止策と役員等の処分を発表した。独禁法の順守規定とそのための「運用細則」(ガイドライン)などを制作することや社長以下の報酬自主返上などが主な内容だが、「事件が起きた経緯や組織的な関与の有無などについては答えない」とコメントしている。

より罪深いのは、ただカルテルを結んだということだけでない。後発薬の使用を後押しする国の政策に対し、国民の信頼を揺るがしかねない点だ。

後発薬普及のため、さまざまな恩恵措置

国は2020年9月末までに、数量ベースで後発薬の使用割合を80%以上にする目標を掲げている。初収載時の「薬価」(医療機関や薬局が患者の使った薬の代金として支払い請求する公定価格)において、先発薬の半値以下である後発薬に切り替えることで、医療費の抑制と医療財政を持続可能なものにすることが目的だ。

後発薬の使用(利用)割合を高めるため、医療機関や薬局にはさまざまな報酬点数の引き上げや優遇措置が与えられている。こうした優遇措置により、後発薬メーカーは間接的に恩恵を受けていると言える。

しかし、そのままでは公定価格の薬価が高止まりしてしまうため、それを防ぐ工夫として、2年に1回(2020年度以降は毎年)の薬価調査と薬価改定を行っている。具体的には、医薬品卸会社から医療機関・薬局への実際の販売価格(市場実勢価格)を調査し、薬価との差額を算出、それを薬価引き下げに反映させる制度だ。製薬メーカーから医療機関に至るまでの医療用医薬品の流通市場は、薬価の範囲内で自由競争となっている。この自由市場競争のメリットを活用して薬価を引き下げ、国民の利益に還元させる狙いがある。

しかし製薬メーカーが談合して卸会社への仕切値を不当につり上げれば、最終的に市場実勢価格の高止まりにつながり、将来の薬価引き下げ幅が縮小し、国民の利益を阻害することになりかねない。

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