ジェネリック薬で初のカルテル、「主犯」は誰か 課徴金137万円、小さな談合事件の大きな意味

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一方、日本ケミファは後発薬業界10位前後の中堅企業だ。もともと先発薬主体のメーカーだったが、2000年代から後発薬に本格的にシフトするなど、後発薬メーカーの中ではやや異色の経歴を持つ。2019年3月期の売上高は341億円、営業利益は14億円。設立から70年近い歴史を持つ企業だ。

両社はOD錠を共同開発し、お互いが自社の後発薬として販売するとともに、日本ケミファがコーアイセイに製造を全量委託する業務提携を結んだ。2018年2月に厚労省から承認を得て、同年6月に薬価収載と、ここまではトントン拍子で進んだ。

しかし、ここから不正が動き出す。公取資料によると、2018年6月20日に、OD錠で安売りをしないことを相互に確認し、同年7月20日には、日本ケミファが自社仕切値をコーアイセイに提示し、コーアイセイの仕切値をこれに合わせるように依頼した。

日本ケミファはなぜ「自主申告」したのか

そして、同年8月上旬になって、コーアイセイが日本ケミファの要請に応じると回答した。

実際、コーアイセイは2018年9月にOD錠を発売する。卸会社への仕切価格は日本ケミファと示し合わせた通りだ。一方、日本ケミファは「安定供給を受けられない」という理由で、発売開始することなく、2018年11月に販売を断念した。

日本ケミファは公取委に対し、2018年10月24日に談合を自主申告したが、このタイミングでなぜ自主申告したのか、会社が口を閉ざすため、その理由は謎のままだ。

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