ジェネリック薬で初のカルテル、「主犯」は誰か 課徴金137万円、小さな談合事件の大きな意味

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現在の山口一城社長は明社長の長男で、1958年生まれの60歳。1994年に社長に就任してからちょうど四半世紀が経ち、明社長時代と同様、長期ワンマン体制の弊害が出ている可能性がある。悪質な不祥事が再発した背景に同じ企業風土問題が絡んでいないと言い切れるかどうか、気になるところだ。

激烈な新薬開発競争があった1982年当時と同様、現在も主力事業である後発薬市場の競争は激しい。後発薬比率を80%に引き上げる目標期限は2020年9月末に迫り、現在はすでに75%。今後は後発薬の数量増加ペースは鈍化するとみられる。

また、後発薬価格の大幅引き下げにつながる薬価制度抜本改革が2018年春に導入され、これまで2ケタの数量増ペースで成長し続けてきた国内後発薬市場の拡大もいよいよ終焉に向かうとみられる。近い将来は金額ベースで市場が縮小するとの懸念も出ている。

後発薬市場の厳しい消耗戦

沢井製薬、日医工、東和薬品の後発薬「大手3強」は、大型M&Aによってアメリカ市場に進出したり、卸チャネルの開拓、新規事業の積極開拓など「国内後発薬一本足経営」からの脱却を急いでいる。

こうした大手と厳しい競争にさらされ、体力の乏しい日本ケミファが苦しい消耗戦に入っているのは確かだ。その影響は業績にも現れており、営業利益は2013年3月期の39億円をピークに、2019年3月期は14億円。今2020年3月期は8億円と、さらなる減益を見込んでいる。大型後発品の開発やM&Aなどで攻勢に出る大手後発薬メーカーに押されっぱなしだ。

国の後押し策で高成長してきた後発薬市場には、大小合わせて100社ともいわれるメーカーが存在する。価格カルテルに手を染めたくなる誘因は多くの企業に共通だ。「はたして談合に手を染めるのは2社だけなのか」。製薬業界関係者の間では、そういう声がささやかれ始めている。

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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