インドネシア版「Suica」はQR決済に勝てるか 都市鉄道網拡大でICカード普及、今後は?

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QRコード決済の普及は目覚ましく、KCIマンガライ駅構内のスターバックス店舗のスタッフによると、最近は多いときは客の約半数がQRコード決済で、逆に銀行ICカードでの決済はほぼ見られなくなったという。

インドネシア中央銀行の統計によれば、QRコード決済の解禁わずか1年にもかかわらず、2018年の電子マネー決済総額は前年比300%を越えるほどの伸びを見せている。

QRコード決済アプリは駅ナカのコンビニや軽食スタンドでも存在感を見せつけている(筆者撮影)

QRコード決済の急激な拡大は、大幅な還元キャンペーンによるところもあるものの、アプリ内で日常生活のおおよその部分がカバーできる点も大きいだろう。配車アプリはフードデリバリー、買い物配送、クリーニングサービスの利用などをはじめ、携帯使用料や光熱費などの支払いにも対応しており、実店舗に出向くこと自体が減っている。チャージもスマホのオンラインバンキングでできるため、この利便性に慣れてしまうと、もはや手放すことはできない。

しかしながら、すべてがQRコード決済に支配されるということは当面ないだろう。どの電子マネーも交通を核として、その顧客をしっかり取り込んでいるからである。KMTの相互利用が拡大すれば、ジャカルタ市内の電車・バスはKMT、自家用車の利用者は銀行の電子マネー、二輪・四輪配車および日常的な買い物はアプリを用いたQRコード決済というすみ分けがなされるものと予想する。

鉄道もQRコードに流れる?

ただ、今後の動向で気になるのは、MRTJが配車アプリとの一括決済システムの構築を目指していること、またKCIの親会社であるインドネシア鉄道(KAI)が、駅窓口での現金扱いを廃止すると発表していることである。KCIも親会社の意向に沿い、KMTやTHBは存続する予定であるものの、将来的には駅での現金授受を廃止する方針だ。

タイで市民権を獲得しつつあるブルーペイも自動販売機での決済専用でジャカルタに上陸。駅構内を中心に多数設置されている。奥はスマホ用のパワーパックレンタル機(筆者撮影)

KAIの現金扱い廃止の方針は、他社に一歩出遅れた感のある国営企業連合のQRコード決済アプリ「リンクアジャ」の利用拡大というもくろみもあるが、ある程度システムが構築されつつあった鉄道においても、このようにQRコード決済を導入する可能性が出てきているのも事実だ。

フェリカを搭載した各カードも、ポイント付与や、住居のカードキー、また社員証情報を搭載するなど、新たな付加価値を付ける必要が出てくるのではないだろうか。

都市鉄道網の発達とともに、利用者や利用場面が広がりつつあるフェリカ搭載の鉄道系ICカードと、新たな交通手段である配車アプリとともに急速に伸びたQRコード決済。用途によってすみ分けが図られるのか、あるいはQRコード決済がICカードを追い越し、鉄道にも広がることになるのか。交通機関を巻き込んだキャッシュレス化の動きは、さらに加速していくだろう。

高木 聡 アジアン鉄道ライター

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たかぎ さとし / Satoshi Takagi

立教大学観光学部卒。JR線全線完乗後、活動の起点を東南アジアに移す。インドネシア在住。鉄道誌『鉄道ファン』での記事執筆、「ジャカルタの205系」「ジャカルタの東京地下鉄関連の車両」など。JABODETABEK COMMUTERS NEWS管理人。

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