インドネシア版「Suica」はQR決済に勝てるか

都市鉄道網拡大でICカード普及、今後は?

実は、KCI側がフェリカの導入に強い関心を抱いていたとのことだ。

テレコム製のチップは改札口での反応や読み取り速度に問題があったことも1つの理由だが、当時のKCIはJR東日本との相互協力の覚書を締結し、ハード・ソフト両面において日本から学ぼうと全社的に動いていた時期であり、やはりカードもスイカと同じものが欲しいという気運が高まっていたのが大きいという。

さらに、当時のKCI社長トリ・ハンドヨ氏が同社では極めてまれな外部からの登用者で、非常にビジネス感覚に優れていたことも、フェリカ採用がとんとん拍子に決まった理由だという。

しかしながら、当時トリ氏は体調不良を理由に退任が決定していた。なんとしても在任中に報道発表したいとの希望から、退任と同日の2015年2月3日に滑り込みセーフのような格好で、KMTへのフェリカの採用(THBは従来と変わらず)がリリースされた。実際にフェリカを搭載したカードが流通し出したのは、数カ月後のことである。

「時計型」で強みを発揮

だが、フェリカ搭載のカードに切り替わることにより何が変わったのかというと、利用者としては正直なところあまり実感がない。というのも、カードの性能がよくなっても改札機は従来のままだからである。

KCIのターンスタイル改札機。国営3銀行が発行する電子マネーICカードも利用できるとのラッピングが施されている(筆者撮影)

KCIの改札機は回転バー式(ターンスタイル)であるため、1人1人が改札機で止まる前提であり、前の人が進まないと次の人は改札に入れない。これでは、いくら読み取り速度が速くても意味がない。もちろん、通信エラーによるストレスから解放されたというのは事実であるが、1分間に60人が通過できるフェリカ本来の性能は活かしきれていない。

当初発売されたリストバンド型とキーホルダー型のKMT(筆者撮影)

そこでまず考え出されたのが、腕時計のような形状のリストバンド型KMTである。KCIの乗車券はすべてICカード化され磁気券が存在しないため、チャージ(当地ではトップアップと呼ぶ)の際に券売機に挿入する必要はない。そのため、カード型である必要はないのである。

このタイプが開発された背景には、インドネシア特有の事情がある。KCIの場合、乗客の多くは駅前駐車場にバイクを停めて電車に乗り換える。

駅前のKCI関連会社が運営する駐車場では支払い時にKMTが使用できるが、バイクにまたがったまま財布を出すのは非常に面倒だ。そこで考え出されたのが、このリストバンド型である。これは見た目を重視するインドネシア人にとても受けた。

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