「風は気まぐれ」、安倍首相は解散に踏み切るか

党内引き締め?それとも4選狙いの大勝負?

一時、大義名分として取りざたされた消費増税の3度目の延期も、ここにきて可能性がほぼ消えつつある。政府が6月下旬に閣議決定する、いわゆる「骨太の方針」に予定どおりの増税断行を明記する方針を固めたからだ。その一方で、首相が意欲を示す北方領土問題を軸とする日ロ交渉や、日本人拉致問題解決に向けた日朝交渉にも急進展の気配はなく、「外交を大義名分とした解散は困難」との見方が支配的だ。

同日選断行の損得勘定についても「現在の衆参両院での自民党議席数はいずれもほぼ上限で、選挙をやれば余程のことがない限り両方とも減るだけ」(自民選対)とみられている。

もちろん、「現状なら衆参両院での与党の安定多数確保は十分可能」(同)とされるが、任期中の憲法改正実現を目指す首相にとって「現在の衆参両院での『改憲勢力3分の2』をどちらも失えば、改憲の機運も一気にしぼむ」(岸田派幹部)ことにもなりかねない。「強引に同日選に打って出て衆参で議席を減らせば、首相の求心力も低下して、4選どころかポスト安倍レースが本格化するきっかけとなる」(自民長老)ことも想定される。

首相在任は伊藤博文超えて歴代3位に

まさに、同日選断行は「首相にとってもメリットとデメリットが交錯」(自民長老)しているわけで、だからこそ解散風も読みにくいのだ。もちろん、ポイントとなるのは、安倍首相が残り2年3カ月の任期を自らどう位置付けているかだ。

党内には「改憲実現にはさらなる任期が必要となりそうなので、今回同日選で国政選挙7連勝を果たし、党内の4選論を加速させたいのが首相の気持ち」(細田派幹部)とみる向きもある。しかし、安倍首相は親しい友人に「4選なんて考えていないから、そのための同日選もありえない」と苦笑交じりに漏らしたとされる。

安倍首相は6月7日に通算在職日数が2721日となり、伊藤博文初代首相を超えて歴代単独3位となる。あと約半年政権を維持すれば、8月24日に大叔父でもある歴代2位の佐藤栄作氏を超え、11月20日には歴代1位の桂太郎氏を抜いて史上最長政権にたどりつく。

このため、首相周辺からも「史上最長政権と東京五輪の開催で区切りをつけ、五輪後に力を残して退陣表明して、院政とキングメーカーを目指すのでは」(閣僚経験者)との声も出る。もちろん「その場合の解散断行は、後継者に委ねる」(同)ことになる。

さまざまな臆測が飛び交う中、会期末に向けて終盤国会の審議は淡々と進んでいるが、自民党幹部が明言してきた「会期延長なし」の方針は、ここにきて揺らぎ始めた。政府が国家戦略特区法改正案の今国会提出に動いたからだ。党内では「法案処理を理由に国会を7月上旬まで小幅延長し、6月末のG20(主要20カ国・地域)首脳会議での成果を掲げて解散する布石では」との見方も広がる。

「風」発言の後、首相は3日夜には私邸で岸田文雄自民党政調会長と密談。さらに4日には首相官邸で政権を支える二階、麻生両氏と相次いで会談した。

岸田氏は「参院選選挙公約の調整」、二階氏は「参院選の対応協議」と説明し、とくに二階氏は「(解散話は)今の季節ではない。幹事長の知らない解散なんてやれるわけがない」と記者団を煙に巻いた。ただ、党内外で「政権幹部との連続的な会談は、同日選の是非をめぐる腹の探り合いだったのでは」(公明党幹部)と勘繰る向きもある。

6月19日の党首討論開催が正式に決まり、主要野党が会期末に合わせた内閣不信任決議案提出の方針を固めれば、19日以降の国会は「同日選をにらんだ緊迫の遭遇戦」(自民国対)となることは間違いない。

安倍首相らが解散風を吹かし続ければ、現・元職や新人の衆院選立候補予定者は、選挙事務所確保やポスター撮影などの本格的選挙準備に走り出す。そうなると、人気スナック菓子のCMではないが「(解散は)やめられない、とまらない」という状況になる可能性も大きい。

「それが首相の狙い」(細田派幹部)との声も出る中、全議員やメディアが首相の一挙手一投足に目を凝らす緊張状態が当面続きそうだ。

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