「風は気まぐれ」、安倍首相は解散に踏み切るか 党内引き締め?それとも4選狙いの大勝負?

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一方、立憲民主党などの主要野党には緊張感がみなぎった。立憲民主党の枝野幸男代表は31日の記者会見で、「安倍さんは解散するという前提ですべてを組み立てている」と指摘し、同日選を前提に選挙準備を急ぐ考えを示した。また、共産党の笠井亮政策委員長は「首相が解散をもてあそぶ態度は許されない」と批判しつつ、野党の選挙共闘構築の重要性を強調した。

「首相は、解散と公定歩合については嘘をついてもいい」というのが政界の定説だ。ただ、これまで「(解散は)頭の片隅にもない」と繰り返してきた安倍首相がこのタイミングであえて解散風に言及したのは、「野党の反応を探るための観測気球」(自民幹部)と見る向きが多い。

自民党内でも「過去の例でも、解散風を吹かすのと実際の展開は違うことが多い」(閣僚経験者)との指摘もあり、首相サイドも「あえて首相が触れたのは、解散する気がないからだ」(側近)としたり顔で解説する。

「魔の3回生」から吹き出す同日選待望論

過去を振り返っても、首相が衆院解散を決断する最大の要素は「勝てるかどうか」(首相経験者)。永田町での1強多弱体制が続く中、「参院選に向けた野党の選挙準備が遅れている」(国民民主幹部)のは事実で、主要野党はようやく参院選のすべての1人区(32選挙区)で統一候補擁擁立方針を決めたが、各党公認候補の相互推薦の是非など、統一候補の支援態勢をめぐる調整はなお難航している。

これに対し、与党は公認候補の選挙支援態勢を整えており、「衆参ダブル選ならさらに有利になる」(自民選対)との声も出る。首相が風に言及すると、選挙基盤が弱いとされる衆院自民の「魔の3回生」などから同日選待望論が吹き出すのもそのためだ。

首相の盟友で「内閣の大黒柱」の麻生太郎副総理兼財務相も以前からの同日選論者だ。「解散を先送りすれば、政権にとって不利な材料ばかりが増える」というのがその理由。

たしかに、今年10月に消費税を10%に引き上げればその後の景気悪化は避けられず、次のタイミングとされる来年の東京五輪後の解散では「首相の残り任期が1年を切り、政権がレームダック化する中での“追い込まれ解散”になりかねない」(麻生派幹部)のも事実だ。

そこで、問題となるのが「解散の大義名分と、首相にとっての損得勘定」(自民幹部)だ。二階俊博幹事長は「そんなもの(大義名分)は1日あればつくる」と言い放ったが、「大義なき解散ともなれば、有権者が首相の暴走と感じて、拒否反応を起こす可能性がある」(自民長老)との指摘もある。

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