「落ちこぼれる子供」が学校で必ず出る根本原因 150年続く公教育の「限界点」が露呈してきた

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教育学者の苫野一徳氏が、日本の教育体制が起こす「落ちこぼれ生徒」問題の本質について説きます(写真:anurakpong/iStock)  
学校で「落ちこぼれ生徒」が出てくるのはなぜか? その理由と現在の公教育が抱える問題点を、これまで数多の教育現場に携わってきた教育学者の苫野一徳氏による新書『「学校」をつくり直す』から一部抜粋してお届けする。

学校に通う子どもたちが、どういうわけだか幸せそうじゃない。もちろん、幸せな子どももたくさんいるには違いありませんが、それでもやっぱり、何かがおかしいと思っている保護者や子どもたちは少なくないはずです。

理由はもちろん、人それぞれです。いじめ、体罰、過度の管理・統率、厳しすぎる校則、空気を読み合う人間関係、落ちこぼれ……等々。

でもこれらすべての問題の根底には、ある共通の本質がある。わたしはそう考えています。

結論から言ってしまいたいと思います。公教育が始まって、約150年。学校教育はこれまで、ずっと変わらず、基本的に次のようなシステムによって運営されてきました。すなわち、「みんなで同じことを、同じペースで、同質性の高い学級の中で、教科ごとの出来合いの答えを、子どもたちに一斉に勉強させる」というシステムです。

ところがこのシステムが、今いたるところで限界を迎えているのです。

生徒が「落ちこぼれる」問題

1つの象徴的な例が、嫌な言葉ですが、いわゆる落ちこぼれ・吹きこぼれ問題です。多くの人は、「落ちこぼれ」は、その子の理解力が低いから生まれるものだと思っているのではないかと思います。でも実は、これはシステムによって構造的に引き起こされている側面が非常に大きいのです。

考えてみれば当然のことです。みんなで同じことを、同じペースで勉強していれば、一度つまずくと、そのまま取り残されるということがどうしても起こってしまうからです。内容が理解できないまま、授業はどんどん進んでいきます。結果、その子は「落ちこぼれ」のレッテルを貼られてしまうことになるかもしれません。

でもそれは、本当にその子の理解力がもともと低いから起こったことなのでしょうか?

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