「落ちこぼれる子供」が学校で必ず出る根本原因

150年続く公教育の「限界点」が露呈してきた

たまたま、ある大事な授業の日に体調が悪かっただけかもしれません。あるいはお休みしてしまっただけかもしれません。たまたま、その年に嫌いな先生に当たってしまったのかもしれません。あるいは先生の教え方が合わなかったのかもしれません。

でも、「みんなで同じことを、同じペースで」が学校のシステムである以上、先生は、ついていけない子がいたとしても、どんどんと先に進んでいくほかありません。一斉授業・画一カリキュラムが中心の学校では、どのクラスをのぞいても、ほとんどの場合において、授業についていけずに辛そうな顔やつまらなそうな顔をしている子どもたちが一定数いるものです。

一度「自分は落ちこぼれなんだ」と感じてしまった子どもが、学びへの自信、もっと言えば自分自身への信頼を回復していくのは並大抵のことではありません。これは、システムが生み出したある意味で“罪”とさえ言えるのではないかとわたしは思います。

ほとんどの先生が、この問題にはもちろん気がついていて、どうにかしたいと思っています。でも、システムがかなりの程度画一的である限り、すべての子どもに個別対応することは現実的にはとても困難です。その結果、年に何人もの“落ちこぼれ”の子どもが出るのに慣れてしまった先生たちの中には、「そういうものなのだ、仕方ない」と諦めてしまう人も少なくありません。

変えるべきは「今のシステム」

ベテラン先生だけではありません。ある新米先生からも、こんな話を聞いたことがあります。

「授業で時計の読み方について学習をしたんですが、理解できない子どもも少なくありませんでした。だから、その単元を何とか終えたときにはとてもホッとしたんです」

授業時数はあらかじめ決められていますから、その時間内に理解できなかった子どもたちは、結局わからずじまいのまま、次の単元に進んでいかなければなりません。でもその先生からすれば、とにもかくにも、授業自体は予定どおりにやり遂げたのです。

気持ちはよくわかります。でも厳しい言い方をすれば、それは教師としての責任の放棄です。教師の重大な責務の1つは、言うまでもなく、子どもたちの学力──それが何を意味するかについては、またあとでじっくり論じることにしたいと思います──をしっかり保障することにあります。理解できない児童生徒を放って、何とか授業をこなしていけばいいなどということはないのです。

でも、その先生を過度に責めてはならないとも思います。責められるべきは、やはりシステムなのです。「みんなで同じことを、同じペースで、同じようなやり方で」学習する、150年も変わらず続く学校のシステムなのです。

とはいえもちろん、国際的に見ても優秀と言われる日本の教師は、これまで多くの場合、“しんどい子”に対してもしっかり個別にサポートすることを怠りませんでした。その点、わたしたちは日本の先生の責任感と、これまでに達成してきた教育水準に自信を持っていい。

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