30年間無事故「シーサイドライン」逆走のなぜ 想定にない事態、直前までトラブルなし

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一方、会社によると、車止めに衝突した最後尾車両は列車の後部を示す赤いテールライトを点灯した状態だったという。この点から推測すると、システム自体は進行方向を切り替えて列車が進む方向を正しく認識していたものの、何らかの理由でシステムの指示する方向に進まず逆走したと考えることもできそうだ。

ほかの車両の牽引で車両基地に運ばれる事故車両の一部(記者撮影)

シーサイドラインの自動運転システムにはさまざまなメーカーの装置が使われているが、車両に搭載している「ATC/ATO車上装置」は日立製作所製。同社は「シーサイドラインと共同で原因究明に努めたい」としている。地上側から信号を受ける「ATC/TD装置」のメーカーである日本信号も「国の運輸安全委員会の調査に積極的に協力している」と話す。

会社によると、運行システムは保守点検や部品の交換は行っているものの、近年は車両の入れ替え以外に大きな変更はしていない。シーサイドラインは今年3月31日、金沢八景駅を京急線の駅と直結する位置へ約150m移設し、合わせてダイヤも改正したが、この際にもシステムの変更はしていない。

原因究明には長時間?

無人運転の新交通システムでは、1993年10月に大阪市交通局(当時)の「ニュートラム」住之江公園駅で、停止位置を行きすぎた列車が車止めに衝突、194人が重軽傷を負う事故が発生した。

【2019年6月4日10時20分追記】初出時、大阪市交通局(当時)の新交通システム路線名に誤りがありましたので、上記のように修正しました。

事故による運転見合わせで閉鎖された新杉田駅の入口(記者撮影)

この際は係員を添乗させる形での運行再開までに約1カ月を要し、無人運転を再開したのは事故から6年以上が経過した2000年だった。事故原因はATCの減速指令をブレーキに伝える継電器(リレー)の導通不良とされたが、導通不良が発生した理由は究明できず、回路の二重化やブレーキの信頼性向上などで事故を防ぐ対策が施された。

これまで事故のなかったシーサイドラインのシステムに何があったのか。安全の根底に関わる部分だけに原因究明は長引きそうで、今のところ運転再開のメドは立たない。沿線在住で頻繁に利用するという60代の男性は「普通の電車より安全だと思っていたくらいなのでびっくり。運休になると便利な乗り物だったんだなとわかりますね」と漏らした。

無人運転の新交通システムはシーサイドラインのほかにも全国に複数存在し、地域の足として定着している。自動運転技術そのものへの信頼が揺らぐことがないよう、原因の究明が待たれる。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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