AIでアメリカ株が暴落する可能性が出てきた? 円高・日本株の下落も同時に進行するのか

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そのヒントを探るべく、アメリカ株の代表的な株価指数であるNYダウをテクニカルの視点から見てみよう。テクニカルのフォーメーション(パターン)分析を活用すると、NYダウは暴落の予兆、あるいはこれ以上は上がりにくいとされる「三尊天井」を形成しつつある。

フォーメーション(パターン)分析とは、株価チャートの形状により、相場の底や天井、トレンドの転換点などを読み取るテクニカル分析手法の1つだ。三尊天井はヘッドアンドショルダーズトップとも呼ばれ、相場の高値圏でしばしば見られるチャートの形状の1つだ。

「3つの山」がある中で「中央の山」がもっとも高くなり、通常、ネックラインと呼ばれる支持線・抵抗線を明確に下抜けたところで完成し、売りシグナルとなる。これをNYダウに当てはめてみると、左の山が2018年1月26日につけた2万6616ドル、真ん中の山が2018年10月3日につけた2万6951.81ドル、右の山が2019年4月23日につけた2万6695ドルと、確かに真ん中の山がもっとも高い三尊天井を形成しつつあるように見える。ネックラインは2万3200ドル前後あたりだ(ネックラインを下抜けて、再びこのラインを上回れないことをもって完成とするため、現在は三尊天井はまだ完成していない)。

AIの投資判断で市場のクラッシュは起きるのか?

こうした天井圏で見られるチャートのパターンがNYダウに表れていることは「要警戒サイン」として捉えられそうだ。もしこのチャートパターンが完成および完成しようとした場合、過去のデータから学び、俊敏で破壊力のあるAI・アルゴリズム取引が機械的に作動。「ショート」としての売り仕掛けやリスクヘッジとしての売りポジションを一気に構築しにいくことも考えられる。

NPO法人・日本テクニカルアナリスト協会では7月12日『AI・フィンテックによる運用の未来』と題してパネルディスカッションを行う。AI運用の世界でテクニカル分析は今後どう使われるかなどを活発に議論。興味のある方はこちらからお申し込み下さい

そうした場合は、企業業績や、株価指標面から見た割安度合いなどの「ファンダメンタルズ」(基礎的条件)を無視し、リスクオフ相場(アメリカ株安、円高、日本株安)の流れが一段と強まり、市場がクラッシュする可能性も排除できない。投資家として今後のマーケットを予測する上で、またリスク管理という視点でAIの動きも十分に考慮に入れておく必要がある。

AIの進化は、大量のデータ収集・分析や投資判断ツールとして活用することで、投資家(人間)にとって多大な便利さをもたらす一方、マーケットの増幅を生み出すことで新たな脅威にならないことを祈るばかりだ。

中村 貴司 東海東京調査センター 主任調査役 シニアストラテジスト

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なかむら たかし / Takashi Nakamura

日系、外資系証券、損保・証券系運用会社でアナリスト、ファンドマネージャー等を経て現職。ファンダメンタルズ分析にテクニカル分析や行動ファイナンス理論を組み合わせた投資戦略、市場分析を重視。国際公認投資アナリスト(CIIA)、CFP、国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)。日経CNBC等での出演のほか。日経新聞、QUICKなどでもコメント・執筆。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター「ファンドマネジメント講座」などで講師を務める。

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