日本がトランプ大統領の「攻撃」をかわす方法 トランプ訪日後の日米通商協議を予想する

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おそらくトランプさんご一行がもっとも喜んだのは、日本側「おもてなし」もさることながら、「反トランプデモ」をほとんど見かけなかったことだと拝察する。最近はトランプさんの行くところ、騒音とプラカードが押し掛けるのがデフォルトになっている。このあと予定されている英・仏・アイルランド訪問などは、きっとそうなるだろう。

その点、トランプ夫妻が宿泊した大手町のパレスホテル周辺はまことに静かであった。そりゃそうだ。新しい天皇皇后両陛下がお迎えする最初のお客様に、そんな失礼があっちゃあいけないだろう。今回、令和の皇室外交が順調にスタートしたことも、嘉(よみ)すべきことと言わなければならない。

トランプ大統領が欲しい「果実」とは?

いや、それはいいんだけど、日米の通商問題はどうなるのか。トランプさんはツィートで、「7月の選挙(なぜか”July elections”と複数形だった)が終わったら、すごい数字が出てくるぞ」などと言っている。あれはいったい何を根拠にして言っているのだろう。

解説しよう。日米通商協議は昨年9月にスタート以来、今年の春までほとんど進んでいなかった。ちなみに当時はFFR(Free=自由, Fair=公正, Reciprocal=相互的)と呼ばれていたのだが、この名称、今ではすっかり忘れられている。米中貿易戦争が勃発して、それどころではなかったのであろう。

今月になって米中交渉が行き詰まり、「ところで日本は?」と相成った。特にトランプさんにとって重要なのは農産物だ。中国が買ってくれなくなった分をいったいどうするのか。まして農業州の支持は、トランプ再選戦略に重要な意味を持つ。トランプさんとしては、「もうすぐ日本が買ってくれるぞ~!」と言いたいわけだ。

ところが日本では、すでにTPP11、日欧EPAという2つの経済連携協定が発効している。この4月には、両協定が2年目に入って輸入関税がまた下がる。特に牛肉関税はそれまでの38.5%から26.6%になる。この間に日本市場では、豪州産牛肉や欧州産豚肉のシェアが拡大している。アメリカの畜産団体から見れば気が気ではないところ。仮にアメリカがTPPから離脱していなければ、今頃は同じ関税率で競争力を維持できたはずなのだが。

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