真っ白な中高生を蝕むネットの激しすぎる主張 オウム真理教を面白がる子どもの危険な実態

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彼のTwitterは、絵に書いたようなネトウヨそのもの、といった雰囲気ではありませんでした。ネトウヨと思しきユーザーのツイートをリツイートしているのは気になりましたが、Twitter上で人種差別を含んだ主張を繰り返しているわけではなかったのです。

ここではたまたま「ネトウヨ的」な情報を信じ込んだ生徒の話を紹介しましたが、まったく正反対の情報に接して、信じ込んでいる子どももいることでしょう。つまり「安倍政権が戦争を仕掛けようとしている」式の主張です。

その後、当塾のいわゆる事情通の生徒たち何人かに、極端な政治的立場を主張するタイプの同級生がいるのか質問をしてみました。大抵はいないとの返答でしたが、なかには普段は大人しいのだけど社会の授業になると教師に盛んに突っかかっていく生徒がいるという返答がありました。

大人たちは危機意識を持つべきだ

ただ、教師に歯向かって自説を唱えていたことは確かですが、その主張の内容を当塾の生徒は十分に理解できていなかったため、その主張がネトウヨに強く影響を受けたものだとは断定できません。

また、ほかの生徒からは軒並み「いない」という答えが返ってきましたし、日々生徒たちと雑談をして得た私なりの感触からしても、今のところ、こうした生徒は一部の存在なのだろうとは思います。

しかし、スマホを所持する中学生の割合は、近年になって急上昇しています。また、ネット上で知り合った人とリアルな接触を求める子どもたちの割合も急上昇していることから、ネットに対する信頼感が増していることが推察されます。

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こうした子どもたちの急速な変化と、それに対応できない日本の教育を念頭に置くと、今は一部の生徒が年々増加し、決して一部では片づけられない状況になるという未来が見えてきます。

子どもが政治に興味を持つこと自体は決して悪いことではありません。しかしながら、学校では「保守」「リベラル」といったことは教えませんし、そもそも政治的な問題についても触れたがりません。

そんな中で、たまたま最初に触れる思想や意見が、極端な人たちの極端なものだったらどうなるか。

こうしたことについて、もう少し大人たちは危機感を持ったほうがいいのではないかと思うのです。

物江 潤 著述家、塾経営者

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ものえ じゅん / Jun Monoe

1985年福島県生まれ。2008年早稲田大学理工学部社会環境工学科を卒業後、東北電力株式会社に入社。2011年2月同社を退社。2019年5月現在は地元・福島で塾を経営する傍ら、フィールドワークと執筆にも取り組む。著書に『聞き歩き福島ノート』など。

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