踊り子の"兄"、JR西に残る「117系」の過去と未来 ユーモラスな顔、かつては「新快速」の代名詞

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もともと座席は転換クロス式だったが、現在はラッシュ時の混雑に備えて扉付近がロングシートになっている。だが、中央部や車端にはオリジナルのクロスシートが残存。座ってみると、スプリングの弾力がよく効いた昔ながらの感触に、思わず「これだよ、これ!」と声が出た。枕カバーもそのままで、プラスチック製の肘掛けやモケットが張られた側部が懐かしい。

117系の車内。混雑対応のためドア付近はロングシート化された(筆者撮影)

天井に目をやると、蛍光灯にはカバーがつけられ、その横にクーラーの吹き出し口がスリムに配置されている。中央部にグリルや扇風機などはなく、とてもすっきりした印象。木目調の妻面壁もそのままだ。さすが、関西地区のフラッグシップトレイン、新快速用に造られた車両である。

一方で、車内に掲げられた「禁煙」のプレート(ステッカーではない)や、床に設けられた点検口などに、歴史を感じる。

広々とした乗務員室

前面が非貫通構造のため、乗務員室はとても広々している。105系などと同じツーハンドル式で、金属部分が鈍い輝きを放っている。助士席側には、後年になって取り付けられた保安機器類がずらりと並んでいた。

117系の運転台。非貫通式のため広々としている(筆者撮影)

和歌山エリアでの運用が終了したことで、117系の舞台がまた1つ減った。残る2つの舞台も、さほど長くはないだろう。MT54形モーターやCS43形カム軸式制御器の、あの独特の音を心行くまで堪能できるのも今のうちだ。

一方、JR西日本は2020年春に新たな長距離列車「WEST EXPRESS 銀河」をデビューさせるが、この改造種車として117系が使用されることになっている。

先ごろ発表されたイメージパースでは、西日本が誇る美しい海や空を表現したという「瑠璃紺色」の外観やロゴマークとともに、ごろんと寝ころべる「ノビノビ座席」などを備えた車内も公開。これまでの117系からは想像もつかない、新たな役柄が用意されている。デビューから40年という節目の年に、さらなる進化を遂げる117系に期待したい。

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伊原 薫 鉄道ライター

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いはら かおる / Kaoru Ihara

大阪府生まれ。京都大学交通政策研究ユニット・都市交通政策技術者。大阪在住の鉄道ライターとして、鉄道雑誌やWebなどで幅広く執筆するほか、講演やテレビ出演・監修なども行う。

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