板挟み「中間管理職」こそ会社の宝である理由 組織の「知識創造」はいかにして行われるか
初日は本音で意見を主張し合い、議論が白熱する。2日目には互いに意見を理解しようとし始める。3日目になると論理的な意見も出尽くしてくるが、そこでさらに初日の議論に立ち戻ると、さらに深く本質的な議論になり、創造的な新しい解決策にたどり着くという。
そして3日3晩の生きた時間を共有した参加メンバーは、その後もスムーズにコミュニケーションが取れるようになり、部門を超えた協業ができるようになる。
ホンダは「冒険しよう」というトップ方針を受けて、ミドルマネジャーであるリーダーが現場と対話を繰り返し、 「クルマ進化論」「トールボーイ」というコンセプトを生み出した。リーダーの渡辺洋男氏は「理想と現実の大きなギャップのおかげで成功した。クルマはどうあるべきかを考え新技術やコンセプトをつくり出せた」と述べている。
今こそ求められる「知識の創造」
組織の知識創造の仕組みを世界で初めて解き明かした本書は世界に大きな影響を与えた。
日本人は暗黙知を強調し、欧米人は形式知を重視する傾向がある。本書も「それぞれ強み・弱みがあることを認識したうえで、お互いに学ばなければならない」と指摘している。
本書が出版された1996年は、日本企業が組織的な知識創造をビジネスに結びつけていた絶頂期だった。その後の日本企業はバブル崩壊・金融危機による雇用・設備・債務の3つの過剰解消に追われた。ホンダのワイガヤのような組織的に暗黙知を共有するプロセスは、一見手間がかかる。多くの企業でこのような方法は見直しの対象になった。
一方で形式知を重視する欧米人は、組織的に暗黙知を共有し、形式知を生み出すデザイン思考などの具体的な方法論を生み出した。
暗黙知を強調する日本企業は過度な合理化により自らの強みを弱め、形式知に強い欧米企業は暗黙知を形式知化する方法論を学んだのである。
著者の野中郁次郎もあとがきで「日本企業は、各部署では知識創造をしているが、企業全体としては取り組みがない」として、日本企業の課題に警鐘を鳴らしている。
現代ほど新たな知識の創出が求められている時代はない。戦略的に組織的な知識創造を考え直すうえで、今こそ本書は大いに役立つはずだ。
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