2つのボディは全長も大きく違う。先代に当たるアクセラのセダンはロングノーズ・ショートデッキを強調した結果、売り上げは伸び悩んだということから、80mm伸ばした4660mmとなった。一方のファストバックは逆に、4460mmとアクセラ・スポーツより10mm短い。
こうなるとフラッグシップセダンのアテンザとのバッティングが気になるところだが、マツダは5月9日に行った2019年3月期の決算発表で、直列6気筒エンジンと縦置きパワートレーンの投入を明らかにしており、これが次期アテンザ(マツダ6に改称される可能性もある)になりそうなので、差別化は自然に図れるだろう。
“ストイック”という言葉さえ思い浮かぶ
驚いたのはディテールへのこだわりだ。例えばドアハンドルはパーツの切れ目がない一体成形としてあるし、ドアを開けると見えるピラーやサイドシルは溶接跡をきれいに整形してあり、フロアの補強メンバーは一直線に入っている。ストイックという言葉さえ思い浮かぶほどだ。
ボディカラーはおなじみのソウルレッドクリスタルメタリック、最近の推しであるマシーングレープレミアムメタリックに加え、ファストバック専用色として新開発のポリメタルグレーメタリックを設定。金属の質感を出すアルミフレークと樹脂の滑らかさを出す不透明な顔料を混ぜ合わせたことで、光の移ろいで変わる陰影を楽しむファストバックにふさわしい色になっていた。
インテリアもまた引き算の美学を展開している。ただし最初に形ありきではなく、配置の適正化から考えた。運転席は左右対称とし、ドライバーが見たり触れたりする対象の焦点を等距離とした。ドアとセンターコンソールのアームレストの高さもそろえている。
以前から取り組んできたドライビングポジションについても、マツダ3ではステアリングを前後させるテレスコピックの調節代を拡大し、シートリフターは踵から尻までの距離を一定に保つ動きに変え、シートクッション前端のチルト調整機構の追加などを行っている。
インパネにガーニッシュと呼ばれる装飾パネルを使わないことも、引き算の美学の具現化の1つ。その代わり、シルバーの帯を全周に回して、バスタブに浸かっているような心地よさを出したそうだ。スイッチについては触感を0.01mmの単位で調節し、ボタンを押す際の心臓の動きまで計測したというのがマツダらしい。
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