今年の高校3年生が「浪人できない」理由 ゆとり最終世代の緊張感
従来の「詰め込み型」教育の反省から2002年度に小中学校で、03年度には高校で始まった「ゆとり教育」。学習内容や授業時間を削減して「生きる力」を育むのが狙いだったが、基礎学力の低下が指摘されたため、政府が05年に方針転換。09年から数学と理科で授業時間数が約15%増となる新たな学習指導要領(新課程)が前倒しで実施された。
この結果、「ゆとり教育」の現課程で行われるセンター試験は今年で終わり、来年からは数学と理科が新課程に基づいて行われることになった。ちなみに再来年からは国語や英語も含めた全科目が新課程に切り替わる予定だ。
私立高校3年の娘がいる都内の女性(47)も語る。
「娘が小学校に入ってから学校が完全週5日制になり、授業時間数も少なかったと思います。高校がしっかり指導してくれますし、今も娘はあまりガツガツ勉強するタイプではありません。受験生には、上を目指しながらも『入れるところに入ろう』という傾向はありますね。娘は難関私大志望なんですが、より易しい大学の推薦入試も受け、合格を早めに確保しました」
劇的に変わるのは理科
では、来年からは入試内容がどう変わるのか。具体的に見てみよう。
数学は多くの受験生が現在と同じ2科目を受けることになるが、教科書のページ数が2割以上増えたことを反映して出題分野は当然増える。例えば「数学1・数学A」には「データの分析」や「整数の性質」が加わり、選択問題が出題される可能性もある。
大手予備校「河合塾」教育教材開発部数学科チームの谷口直美サブチーフは次のように分析する。
「現行のセンター試験の数学は数年かけて安定し、学習成果がしっかり測れる出題が多くなりました。新課程でもその傾向が引き継がれるとよいと思います。今回教科書の内容に含まれてセンターでも出題されることになった『整数』は、これまでも東京大学や一橋大学の2次試験で出題されており、かなり難しい分野でしたので、受験生は要注意です」
さらに劇的に変わるのが理科だ。科目名が現行の「物理1」などから「物理」「物理基礎」などに変わる上、従来の6科目から8科目に増える。しかも、現在東京大学や京都大学など多くの国立文系志願者が「化学1」など1科目(60分)の受験を義務づけられているのに対し、新課程では、「化学基礎」「生物基礎」(各30分)など基礎2科目が必須となる大学が多く、受験生の負担が増える。
大学入試センターは昨年11月、来年からのセンター試験で行う数学と理科の「問題例」を発表した。ところが、理科では、基礎的な分野の理解度を測る基礎科目の問題例が全く示されなかった。河合塾は一層の情報公表を求める意見書を同センターに提出した。