今年の高校3年生が「浪人できない」理由 ゆとり最終世代の緊張感
河合塾・同部理科科チームの藤本幸重サブチーフは、こう指摘する。
「理科については情報が不足しています。『基礎』は現行のセンター試験よりも出題範囲が狭まることで取り組みやすくなると予想されますが、文系の受験生がどこまで勉強すべきなのか、生徒や高校にとっては不安でしょう。新課程のセンター試験も出題傾向が落ちつくまでに数年かかる可能性があります。まずは本番を想定した模試などで対策を立てることが必要です」
受験の「プロ」でさえ五里霧中なのだ。
もちろん、前出の教諭が話すように、現役高3生が1浪して挑む来年のセンター試験では、浪人生が現課程の試験を受けられる「経過措置」がとられ、国公立大学の2次試験や私大入試でも、浪人生が不利にならない対策がとられる予定だ。
だが、それも1年限り。大学入試センターの担当者は、
「2浪(再来年のセンター試験)以降は対応していません」
と、きっぱり言う。しかも、来年の経過措置について東大は「(浪人生は)旧課程による科目を選択することができる」、早稲田大学(一般入試)は「新課程と旧課程の共通部分から出題する」と発表済みだが、京大は14年1月8日現在未発表など、大学の対応が出そろっていない。
不透明な改変後の姿
都内の受験生に話を聞いてみると、
「文系は来年から理科の受験科目が増えるらしい。私は今、1科目だけでいいから負担が少ないんですが」(東大文科志望)
「模擬試験にはすでに新課程対応のものがあるんです。先日模試を受けたときに、間違って新課程の問題のページを開いてしまい、全然知らない範囲だったから戸惑いました。先生方は、最近は入試直前だからなのか、あまり危機感をあおりませんが、以前は『浪人するなよ』とよく言っていました」(国立大医学部志望)
と打ち明ける。
このように制度改変の先の姿がはっきりしないことが、受験生の不安のタネになっているのだ。前述した「安全志向」も、こうした不安が要因になっていることは想像に難くない。