「閑古鳥」ジャカルタ空港線、地下鉄開業で挽回? 都心アクセス改善で「座れる通勤電車」に

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さらに、空港アクセスとしてはまだ問題があるのも事実だ。それは、スカルノ・ハッタ国際空港のターミナルに直接乗り入れていないことである。工期を短縮するために、空港内遊休地を使用して開業させた弊害だ。そのため、空港線の駅はターミナル間移動用のスカイトレインと呼ばれるAPM(自動運転電車)と接続しており、そこから各ターミナルに移動しなければならない。

ターミナル間移動用のスカイトレイン。現在は運転士が乗務して時速30キロ以下のマニュアル運転を行っている(筆者撮影)

スカイトレイン自体も問題をはらんでいる。インドネシア初の無人運転車両と鳴り物入りで韓国宇進産電から導入したものの、システム整備が間に合わず、いまだに有人運転を行っているため13分間隔でしか運転されていない。アジア大会に備えて2両編成2本を連結した4両での運転も行っていたものの現在は2両に戻っており、第3ターミナル発着便増加の影響で混雑が一層悪化している。早期の無人運転化と5分間隔での運転を開始してもらいたいものだ。

今のジャカルタを感じられる車窓

ともあれ、空港からジャカルタ都心部の要所までが鉄道で結ばれるようになって1年以上が経過した。スケジュールの面とともに、確実に目的地へ到達することができるという安心感が生まれたことは、渡航者にとってメリットであろう。

民家の軒先をかすめて走る空港線の電車(筆者撮影)

また、筆者が個人的にお薦めするのは、空港線の車窓風景だ。空港から都心に向かう場合、まず目に入るのは築堤上から望むジャカルタ郊外の宅地風景と遠くに霞む都心ビル群とのコントラスト。そして徐々に入っていく下町エリアでは線路間際にまで家々が迫り、車窓から人々の生活風景が垣間見られるが、そんな風景もタナアバンを過ぎ大きくカーブすると一変、高層ビルがひしめく都心のど真ん中、タムリン・スディルマン地区だ。スディルマンバルでMRTJ南北線に乗り換えれば、もはや別世界の雰囲気。今まさに成長を続けるジャカルタの街を生で実感できるのも、鉄道移動ならではである。

1970~80年代に策定された鉄道計画が、今ようやく動き出したばかり。外国人からすると、一瞬えっ?となるような、ある意味インドネシアらしい不便さもぬぐえないが、一昔前から考えれば着実に便利になりつつあるのも事実。ジャカルタにお越しの際、荷物が多くなければ、空港線で都心へ向かうのも一興だ。

高木 聡 アジアン鉄道ライター

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たかぎ さとし / Satoshi Takagi

立教大学観光学部卒。JR線全線完乗後、活動の起点を東南アジアに移す。インドネシア在住。鉄道誌『鉄道ファン』での記事執筆、「ジャカルタの205系」「ジャカルタの東京地下鉄関連の車両」など。JABODETABEK COMMUTERS NEWS管理人。

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