「閑古鳥」ジャカルタ空港線、地下鉄開業で挽回? 都心アクセス改善で「座れる通勤電車」に

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スディルマンバル駅は、KCIのカレット駅とスディルマン駅の中間に設置された空港線の専用駅である。ジャカルタ都心のど真ん中という抜群な立地であるものの、従来はアクセスの悪さという大きな欠点があった。

線路上の人工路盤は一部駐車場になっているものの、わざわざ都心まで車で出て列車に乗り換えるならそのまま車で空港へ行くためか、あまり利用されていない。開業当初は駅前で客待ちしていたタクシーも、あまりの利用者の少なさにいつの間にか待機しなくなり、駅前まで乗り入れるバス路線も休止されていた。

KCIスディルマン駅と空港鉄道スディルマンバル駅を結ぶ通路の以前の様子。キャリーバックなどを持った空港利用者がまったく考慮されていなかった(筆者撮影)

同駅はKCIのスディルマン駅と連絡通路でつながっているものの、500m弱離れている。同じ線路を走っているにもかかわらず駅が別々なのは、新たな用地を取得せず空港線を停車させるための苦肉の策だったが、この連絡通路はおよそキャリーバックを持った旅行者を考慮したとは思えない段差だらけのつくりで、利用者から敬遠される要因にもなっていた。

また、そもそもの問題として、20kmまでの運賃が3000ルピア(約23円)というKCIの乗客が、都心―空港間で7万ルピア(約530円)という空港線には乗らないという事情もあった。ちなみに、都心の各ターミナルから空港を結ぶエアポートバスの運賃は4万ルピア(約300円)である。

地下鉄開業で大幅改善

MRTJ開業に合わせて整備された歩行者用通路。KCIスディルマン駅側から、MRTJドゥクアタス駅、空港線スディルマンバル駅方面を望む(筆者撮影)

だが、ジャカルタ特別州は今年4月のMRTJ南北線開業に合わせてスディルマン駅周辺を一大交通結節点とすべく整備を進め、近接するKCIのスディルマン駅、MRTJドゥクアタス駅、空港線スディルマンバル駅間の乗り継ぎ動線を円滑化した。さらに、バス路線もルートを再編する形で復活した。

2階に移設されたスディルマンバル駅の券売機。以前は左のエスカレーターを上がった先にあった(筆者撮影)

この動きに合わせ、レイリンク社もチケット販売の方法を改善した。従来はインターネット予約に誘導するためにあえて駅の3階に設置していた券売機を、乗り換え客の利便性を考慮して4月から改札階と同じ2階に移設。全車指定席で、チケットの購入に現金は使用できず、電子マネーやクレジットカード決済に限られるのは従来どおりだが、これまでは発車15分前に締め切っていた販売時間を5分前まで延長した。

また、駅名は各線バラバラであるものの、MRTJの駅にネーミングライツが設定され「ドゥクアタスBNI」となり、空港鉄道のスディルマンバル(BNIシティ)駅と共通性が生まれた(同駅もネーミングライツによるもの)点も旅客案内上有利に働いているだろう。3月下旬には、MRTJ車内でKCI、空港鉄道への乗り換え案内の放送も始まった。他の会社線の案内を行うのはインドネシア初である。

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