言われれば納得「タピオカブーム」の意外な本質 単にインスタ映えするだけではない

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人気のティースタンドを見渡してみると、タピオカなしのドリンクが選べるようになっていることがわかる。冒頭のジ・アレイでも、タピオカブームが去った後はお茶で勝負できることを視野に入れている。実際、リピーターには、タピオカを入れないお茶を注文する客も目立つという。嗜好品であるお茶は、リピーターを生みやすい商品と言える。

実際、お茶は今、コーヒーのサードウェーブに続くノンアルコール飲料として、世界から注目されている。タピオカミルクティーは世界的なブームだし、抹茶スイーツなども人気だ。

お茶新時代の到来を告げている?

そのことはお茶生産国でお茶文化がある日本にとっても、将来につながる可能性がある。実は長年、緑茶の生産量も消費量も低下傾向が続いてきた。全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連連絡協議会が割り出した緑茶の国内消費量のピークは、2004年で約11万6800トン。しかし2017年には8万1300トンにまで低下。生産量は、2004年に10万トンを超えていたが、2015年には8万トンにまで下がっている。お茶離れが進んでいたのだ。

ところが近年、世界でのお茶ブームを受けて輸出が急増。財務省貿易統計によれば、2001年に599トンにすぎなかった緑茶の輸出量が、年を追うごとに増え、2015年には4127トンと、14年間で7倍近くにまで伸びている。

海外で盛り上がるお茶のトレンドや文化は、ストレートで飲む日本の定番スタイルとは必ずしも一致しない。

緑茶にミルクや砂糖を入れて飲んだり、フレーバーを加えるのは、タピオカミルクティーだけではない。その飲み方は、日本にも還流している。「ルピシア」や、日本橋でフランス人オーナーが展開する「おちゃらか」など、フレーバー緑茶を販売する店もある。抹茶スイーツはもちろん人気が高い。最近は、緑茶が売りのカフェやティースタンドも増えてきた。

日本では、1990年にペットボトルのお茶が販売されて以降、急須で緑茶を淹れる習慣は廃れ始めた。しかし実は、急須を使う習慣が浸透したのは1970年以降とも言われている。それから半世紀。食事や休憩の際、お茶を淹れるという習慣が当たり前でなくなったからこそ、新しい飲み方が大きなブームとなったのかもしれない。今回のブームは、お茶の新時代到来を告げているのではないだろうか。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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