「あえて寝室を別にする」夫婦が増えている理由 人生100年時代が問い直す「幸福な距離感」

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夫婦の距離感の問い直しの典型が、仲が悪いわけじゃないけれど寝床を別にする、いわゆる「夫婦別寝」だ。

先に断っておくと、「夫婦別寝」とは多くの場合「夫婦別寝室」、つまり別の部屋で寝ることを指すが、同じ部屋の中でもベッドを離して置いたり、仕切りを設けたりして別に寝るということもありうる。

例えば夫婦別寝を意図的に採り入れた初期の作例、白川直行さんの「男女雇用均等法の家」(1986年)は、ベッドの間にカーテンを引くという形をとっていた(森綾『「夫婦別寝」の時代』)。

というわけで、以下では一応両者を使い分けるが、おおむね同じものと考えてもらって構わない。

団地の高齢者では4割近くが寝室を分けている

さて、とりわけ高齢夫婦における「夫婦別寝」はどれくらい存在するのだろうか。

沢田知子さんの多摩ニュータウン内の永山ハイツ、横浜の虹ヶ丘住宅を対象にした団地調査によれば、夫婦別寝室は夫婦のみの家庭では40%に達していて(子が同居している場合には22%)、しかも、この傾向は年齢層が高まるにつれて強くなっているという。

番場美恵子さんと竹田喜美子さんの川崎市内の団地に住む高齢夫婦を対象にした調査でも夫婦別寝室はおよそ約4割だが、こちらは60歳~64歳では同室、64~74歳では別室、75歳以上では再び同室の割合が高くなると観察している。

以下にも紹介する増永理彦さんと富樫穎さんの武庫川団地の高齢夫婦調査では、別寝室は実に48%に上り、年齢別では69歳以下では比較的同室傾向が強く、70歳以上では比較的別室傾向が強いという。

高齢で同寝と別寝、どちらの傾向が強くなるかは団地によって若干の差異があるものの、高齢になって子どもも巣立ったあとで夫婦別寝の選択が増えることはわかっていただけたと思う。

もちろん、こういった事例には一部屋の面積が同寝室にするには足らないために意に沿わずに別寝しているものも含まれているけれども、団地の高齢者では実に4割近くが別寝室になっているのである。

そこで空間と生活との関係において重要なのは、実はどこで、どのように寝ているかということだ。単純化すれば、畳か床か、蒲団かベッドかという問題である。

言うまでもなく、かつて日本では和室と蒲団が身体に合っていた。1980年代でもまだ和室への希望は残っていて、建築学者の初見学らが行った調査によると、ダイニングや子ども部屋を筆頭に多くの部屋では洋室の希望が多かったのに対して、夫婦の寝室については和室の希望がなお6割を超えていたという(鈴木成文他『「いえ」と「まち」』)。寝室は和室の最後の砦になっていたのだ。

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