さらば「パジェロ」、三菱看板SUVが消えゆく意味 国内向け生産が8月に終了、37年の歴史に幕

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ランドクルーザーは、パジェロより10年以上遅れて、1995年にパリ~ダカール・ラリーへの参戦を開始した。ランドクルーザーを製造するトヨタ車体での参戦という体制で、生産車部門での活動を続け、バイオ燃料を使うなどの取り組みも行っている。

総合優勝を狙うプロトタイプではないため、媒体での目立った記事化はあまりなかったが、24年間地道な取り組みを続けている。なおかつ市販車クラスでの1位をほぼ堅持するなど、成績は立派に残している。

そのほか、2014年からガズーレーシングではじめた、もっといいクルマづくりのための5大陸走破プロジェクトにおいて、4輪駆動車を中心に、ランドクルーザー、ハイラックスなどの車種を使い、トヨタ関連の従業員が自らハンドルを握って、現地の人たちが日常的に使う道を毎年2万~3万km走り続けている。

パジェロになかったもの

以上のような活動の中から、ランドクルーザーの活躍を知ることができる機会があり、また、海外で活躍する国連関係の車両としてテレビニュースなどでわれわれの目に触れることもある。

トヨタは、世界一を競う大手自動車メーカーであるからとの側面もあるかもしれないが、ほとんど未舗装路を走る機会のない国内においてもランドクルーザーが堅調に販売台数を確保している背景に、そうした存在感を常にもたらす情報発信があることを忘れることはできないだろう。それが、パリ~ダカール・ラリー撤退後のパジェロにはなかったのではないか。

4月から「パジェロ」に特別仕様車「ファイナルエディション」を設定し、700台の台数限定で販売を開始した(写真:三菱自動車)

一方で、三菱自は、EVのi-MiEVを世界で最初に市販化した頃から、事業の柱を電動車両とSUVに絞る選択と集中を行ってきた。そこから、アウトランダーPHEVも誕生し、今日、PHEVの分野では世界で最も販売台数の多いクルマとなっている。

次は、いつパジェロが電動化の道へ踏み出すのか待っているうちに、国内販売の終了が確定した。販売台数がいかに減ったとはいえ、パジェロは三菱自のSUVの旗頭である。事業の2本柱のSUVにおいて、旗頭がなくなってしまうのはいかにも残念だ。

海外メーカーにおいては、ジャガーが、SUVのEVとしてI-PACEを発売し、走行性能も造形の美しさもすばらしい1台を築き上げた。国内で販売予定の台数は、すでに予約済みとの話もある。ランドローバー社でも、PHEVの販売を開始すると同時に、今年後半にワールドプレミアを予定する次期ディフェンダーの開発の様子が伝えられている。

世界に誇る4輪駆動車としてのブランドを築いたパジェロが、電動化を巧みに採り入れ復活する日があってもいいのではないだろうか。世界累計320万台以上の実績は、そのまま埃にまみれさせる数字ではないように思う。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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