「ホテル」に続々参入するハウスメーカーの思惑 住宅の部資材用いた短期施工性などが強み
もっとも、大和ハウス工業の場合はホテル建設だけでなく、運営も手がけており、住宅の技術やノウハウによるホテル建設に乗り出しているというわけではない。ただ、同社も含め、かつては同様に宿泊事業を展開していた企業もあったという事実をここで念のため確認していただきたい。
ところで、パナソニックホームズと積水ハウスがホテル建設事業を展開するのは、インバウンド市場の拡大を見込んでのことだが、それ以外に国内住宅市場の縮小が予測されるという背景がある。
つまり、非住宅の強化の一環としてホテル建設事業があるわけだが、近い将来、それはほかの住宅事業者にも広がるだろうと筆者は考えている。というのも、これまでに介護や医療、商業などの施設建設同様のことが行われてきたからだ。
海外では木造ホテルも登場
とくに、木造の住宅事業者にもチャンスがありそうだ。というのも、海外では木造によるホテルも徐々にではあるが登場しているからだ。それはCLT(クロス・ラミネーテッド・ティンバー=大型集成材)などの普及に伴う動きである。
カナダでは、この素材を用いた18階建てのホテルが2017年にオープンしているくらいだ。日本でも2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されたことから、中・大規模の木造建築によるホテルができてもおかしくはない状況なのである。
CLTはまだ、法制度上の問題や日本ではコスト面や取扱業者が少ないなどの制約があるため普及していないが、本格普及が始まれば住宅事業者による宿泊施設分野への進出がより広がる可能性があるだろう。
そもそも、住宅事業者はその成長過程で住まいや暮らしの中に世界各国のライススタイルやデザイン、各種設備などを貪欲に導入し、それらを新築住宅やリフォームの提案とすることで、わが国における伝道者的な役割を担ってきた。
その提案は日本的な提案要素もミックスするなど、現在では世界に類を見ないバラエティーに富んだものになっている。その提案力はホテルなどの空間づくりと非常に親和性が高い。すでに、ミサワホームなど、宿泊施設のリノベーションで実績を上げている企業もある。
近年は海外進出するハウスメーカーも増えている。時代が移り変わり、国内住宅市場が縮小に転じた今、インバウンド向けの宿泊施設は、日本の住宅に関するノウハウを生かせる場として、伸びしろのある分野だと考えられる。
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