そのため、現状ではデータではなくKKD(勘、経験、度胸)頼みで、手が打たれている傾向があります。筆者は、人材コンサルティングの仕事をする中で、人事情報に関するデータの整備状況を確認することが頻繁にありますが、大企業でも社員情報は給与情報と異動の履歴だけ……という状況に何回も遭遇しました。システムで管理すると莫大なコストがかかるといった問題もあったと思いますが、いずれにせよ想像以上にデータはそろっていないのです。
ですから、退職率を下げるために、データからイエローカードを探し出すのはすぐにとはいかず、少し時間がかかるかもしれません。
データ管理のツールを企業がうまく使えるか
ただ、データ整備を加速させるきっかけとなりそうな環境は、整いつつあります。テレビCMやタクシー広告等でも見かける機会が増えたという方もいると思いますが、最新のテクノロジーを活用したHR(Human Resource)サービスが増加。さまざまな人事に関するデータを手軽なコストで管理できるクラウド型サービスも続々と登場しています。この流れに乗って、各社がデータの整備を加速させることを期待したいところです。
いったいどれだけイエローカードを導き出せるか。そのために、いちばん大事なものは何か? 矛盾しているように思えるかもしれませんが、それは、最終的には人間の経験と勘です。データから導き出された結果が、本当に因果関係にあるものなのか、最後の判断は人がするしかありません。
例えば、適性テストで絶対に相性が合わないと思われる上司と長く仕事をしていたとか、人事評価で低い評価を2回以上取っているなど、辞めたくなるよな……と思える状況と退職との因果関係が高いと感じられる場合。そうした仮説を立てたうえで眺めてみると、イエローカードを適切に探し出せる可能性は高まるはずです。
人間がデータからよりよい判断をするためには、日頃から注意深くデータと向き合い、日々の分析を積み重ねていく必要があります。データを整備したうえで、どのような組み合わせから精度の高いイエローカードが導き出せるか? 忍耐強く試行錯誤を続けていくことによって、そのシグナルを見逃さない確率は徐々に高まることでしょう。
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