効果的な施策を打って、退職率を下げたいというのが、多くの企業の本音でしょう。そのためには辞めた人たちの退職理由をしっかりと分析し、対策をとることが必要となります。
中には「給料を大幅に上げてくれないと生活できない」など、企業として対応がなかなか難しい内容のものもありますが、十分対応が可能だったということも多くあります。
例えば、上司と部下の関係にストレスを感じることが長く続き、悩んだ末、相談相手が見つからず退職したという社員の方に話を聞きました。
それまで、性格的におおらかな上司の下で一定の成果を出していましたが、異動した職場の上司は相当なマイクロマネジメントをするタイプ。これまでは指摘されなかったような細かな指導ぶりが、どうしても合わなかったようです。業績は下がり、欠勤が増えていき、退職に至りました。退職後に「職場環境が変われば、彼は辞めなかったかも」と残念がる同僚がたくさんいたようです。周囲から見て、退職を避けられたケースなのでは、と感じられたのでしょう。
退職する人は、その気持ちを表すシグナルを周囲に示すものといわれます。シグナルを見つけて、辞めたい理由を聞き出せたなら、対策を打って、辞めない状況が生まれることもあります。
例えば、前述のケースの場合であれば、上司に対応を変えてもらうことで、部下のストレスが緩和されるかもしれません。上司はまさか自分の言動が部下を追い詰めているとはまったく気づいていないだけかもしれないのです。
大事なことは、退職のシグナルを見逃さないことですが、俗人的な経験値や勘頼みでは難しいでしょう。見落とす可能性が大きいですし、見つけ出すのも容易ではありません。
過去のデータから「イエローカード」を探す
そこで進んでいるのが、過去の退職者と同じような状況にある社員をデータから導き出すことでシグナルを少しでも見つけようという取り組みです。
例えば、適性やマネジメントスタイルに基づいた上司・部下の組み合わせとか、業務報告書におけるネガティブコメントや欠勤状況などから「辞めたい」と感じている気配をデータから発見(仮にイエローカードと呼びましょう)できるとしたらどうか? 対策を打つことで退職率を下げることは可能になるかもしれません。
ただ、“イエローカード”を探すために必要なデータの整備が十分かというと、まだ不十分な会社のほうが多く、取り組みが進んでいる会社はごくわずかなのが実情です。
イエローカードを探すためには過去の退職者情報に基づいて、その特徴に近い行動や情報を持つ社員が誰か?といった因果関係を探ることができるデータの蓄積が必要です。例えば、入社したときの適性テストや過去の人事評価、本人のキャリアプラン、受講した研修プログラム、自己申告アンケートなどが、それに当たります。
ところがそうした社員のデータが残っていなかったり、データはあるものの散在しているという会社が大半です。つまり、活用できる形のデータが存在しないのです。
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