消えない「衆参同日選」説、衆院解散はあるのか 内閣・自民支持率高止まりで浮上する強気論
さらに問題となるのは衆院解散の大義名分として、首相側近の萩生田光一自民党幹事長代行が言及した消費税増税の凍結・延期だ。ここにきての景気判断の悪化は米中貿易摩擦の激化も要因とされ、14日の日経平均株価は一時1カ月半ぶりに2万1000円を割り込んだ。これが永田町で「首相が景気悪化を理由に3度目の増税延期を決断して解散の大義名分にする」との観測が出る原因だ。
しかし、2017年秋の衆院選で安倍首相は、消費税10%への引き上げを2019年10月に予定どおり実施することを前提に、税収の増加分の一部を子育て支援や教育無償化への財源とすることを解散の大義名分に掲げた。もし、増税先送りとなれば「前回衆院選の公約無視に加えて、アベノミクスの失敗を認めたことになる」(財務省幹部)。野党だけでなく国民の批判も免れない。
「大義名分抜き」の会期末解散も
しかも、萩生田氏が解散につながる増税延期判断の指標に挙げた「最新の日銀短観」の数値の発表は7月1日の予定で、「解散するためには6月26日までの国会会期の1週間程度の延長が必要」(自民国対)となる。ただ、「会期延長に踏み切る時点で野党側が内閣不信任決議案を提出すれば、与党は否決せざるをえず、一週間後に改めて解散というのは政治的には難しい」(同)ということにもなる。
そこで浮上するのが、6月26日の会期末の内閣不信任決議案提出を受けての衆院解散だ。その場合は「令和新時代の日本の未来を拓く」などの理由を付けるとみられるが、実質的には「同日選で野党を壊滅させるための大義名分抜きの解散」となる。そんな同日選となれば野党選挙共闘は一気に進み、「窮鼠猫を噛む結果」(自民長老)となる可能性も少なくない。
首相にとって解散のタイミングは限られており、永田町では「今後の政治日程からみると、今夏か来年の東京五輪後のどちらか」(自民幹部)とみられている。今年11月から来年春までは皇位継承に伴う重要行事が続き、その後も東京五輪があり、政治空白を回避する必要がある。ただ、今年10月に予定どおり増税すれば、東京五輪後の急激な景気落ち込みが予想されるため、「五輪後の解散では自民党に不利」(閣僚経験者)となるのは避けられない。もちろん、2021年10月の任期満了選挙という選択肢も残るが、首相が自民総裁としての任期中に解散するのなら、客観的にみれば「いちばん条件がいいのは今夏の同日選」(同)となる。
党内では安倍首相の4選論も浮上する一方で、任期中の勇退説も取り沙汰されている。「力を残して院政を敷くのか、超長期政権で改憲や日ロ交渉合意などでの政権の遺産(レガシー)づくりを目指すかの選択」(首相経験者)というわけだ。「東京五輪を花道に勇退するつもりなら、解散は後継者に委ねればいいが、4選を狙うなら同日選断行による国政選挙7連勝が勝負手となる」というのが多くの政界関係者の見立てでもある。
安倍首相は平成最後の日の4月30日夜、私邸で麻生太郎副総理兼財務相と会談した。関係者によると、この席で麻生氏が首相に「同日選をやるべきだ」と進言したとされる。これまでも政局の重要な節目では必ず首相と麻生氏が会談しており、「解散風もこの会談が出元」(首相周辺)との見方もある。もちろん麻生氏は財務相として「増税延期での解散には反対」とされるが、「理屈なら後から貨車でついてくる」(旧民社党の春日一幸委員長、故人)という格言もある政界だけに、会期末まで首相の一挙手一投足に注目が集まりそうだ。
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