海賊被害が急拡大するソマリア沖、海自派遣は焼け石に水

イールなどソマリア東岸の港町には身代金の獲得に成功した海賊の豪邸や、“海賊成金”を当て込んだ高級レストランが林立している。

「ソマリアの海賊は身代金目当てで命は狙わない」というのが通り相場だったが、08年には中国船籍の船の乗組員が射殺されるなど、事件は凶悪化しつつある。また、これまでの標的は小型船が中心だったが、08年11月にはVLCCと呼ばれる超大型のタンカー、シリウス・スター号が乗っ取られた。シリウスの身代金は24億円とケタ違い。サウジアラビア船主の交渉のかいあってシリウス号は1月9日に2・72億円と相場線で“妥結”した。とはいえ、標的船の大型化や身代金の巨額化が進んでいることは確かだ。

アデン湾を航行する船は1回200万円で3~4人の警備員を2泊3日で雇うことができる。警備員は、敵の鼓膜を破るほどの威力を持つ指向性の超音波発信器・LRAT(エルラット)で“武装”している。とはいえ、重火器で武装している海賊に襲われたらひとたまりもない。実際、08年には船を捨てて警備員が逃走するなど無力ぶりを露呈したケースもあった。

アデン湾に派遣されている護衛艦は現在26隻。内訳は、米国を中心とした二つの「有志連合軍」で計12隻、英、仏など8カ国による「EU(欧州連合)軍」が4隻。これにマレーシアの1隻、ロシアの6隻、インドの1隻、中国の3隻、イランの1隻が加わる。

有志連合軍やEU軍は「安全回廊」を指定して護衛。さらにEU軍は運航スケジュールを提示、商船同士が時間調整をし船団を組ませることで、護衛の効率化を図っている。

それでも、長さ約1000Km、最大湾幅約400Kmと広大なアデン湾を航行する年間2万隻もの船の護衛が26隻では到底足りない。「過半の船は、今もなお護衛なしの丸腰で航行している」(大手海運幹部)。海上自衛隊は3月にもアデン湾での護衛活動を開始するが、現在予定している1~2隻の軍艦投入では焼け石に水。現行法では他国艦との情報交換もままならず、効率的な護衛活動は期待できない。海運業界の苦悩は当面解消しそうになさそうだ。

(写真は日本郵船が海上保安庁と実施した海賊対策訓練)

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