中毒者続出の動画アプリ「TikTok」は安全か 中国政府が個人情報にアクセスできる?

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――中国のグローバル・タイムズ紙は、「中国によるアメリカへの諜報活動についての非難は伝聞に基づくものか、根拠がないかのいずれかだ」と反論しています。中国政府は本当に民間企業が収集した個人情報にアクセスしていると言えるのでしょうか?

私にはそれを知る方法がない。バイトダンスは最近、「(海外で展開している)TikTokの個人情報と(中国版TikTokである)抖音(ドウイン)の個人情報は完全に分けている」、そして「TikTokから収集したいかなるデータも中国国内で保存していない」と表明している。「だから政府はアクセスできない」と言う。

彼らはさらに、「非中国ユーザーの匿名化された個人情報は、アルゴリズムの深層学習を改良するというビジネス上の目的で中国に送られている」と主張する。だが、これが事実だったとしても、私は非常に懸念している。なぜなら個人情報を匿名化するのはとても難しく、ビッグデータはつねに再識別化されるリスクにさられているからだ。

Claudia Biancotti/イタリア銀行のシニアエコノミストを経て、2018年10月からピーターソン国際経済研究所の客員研究員。サイバーセキュリティ経済学やテクノロジー企業の規制を研究

「差分プライバシー(データにノイズを加えて匿名化する手法)」によって、(AIは)進歩していく。だが今日、再識別化の攻撃を防ぐ技術はまだ存在していない。たとえバイトダンスが「絶対に中国にデータを送っていない」と言ったとしても、私はほかの国の政府当局が自国民のデータを監査する必要があると考えている。それはバイトダンスが中国企業であるからではなく、彼らがすでにユーザーデータの重要な収集者となっているからだ。

フェイスブックやグーグルよりやっかいだ

フェイスブックを見てみなさい。彼らはユーザーの同意を求めずに、データを外部と共有して乱用したという複数の調査結果が出ている。EUにおけるグーグル、ネットフリックス、アマゾンに対するプライバシーの訴訟も数多くある。政府当局が「うまくやっている」とハイテク企業を評価するのは不十分で、検証する必要がある。

もちろん中国についてはさらに大きな問題がある。中国政府はほかの国の政府当局に対して、バイトダンスが中国で何を行っているかを審査できるよう許可することはない。だから彼らが不正行為をしていないかどうか、確認するのは非常にやっかいだ。

――TikTokは日本の若者の間でも非常に人気です。日本の政府機関や企業はTikTokとどう向き合うべきでしょうか。

日本の個人情報保護法が近年、大幅に見直され、以前に比べ厳格になったことは私も知っている。政府機関は、まずバイトダンスの日本法人がこれらの法律に従っているかどうかを確かめる必要がある。そして、もしバイトダンスやほかの企業が法的証拠を満たす十分な資料の提出を拒んだ場合、彼らが日本でビジネスを行うことを許可すべきではないだろう。

EUがアメリカと個人情報保護協定をアップデートしたのは、数年前に起きたアメリカによるスパイ活動がきっかけだ。今のところ、アメリカのウェブサイトのいくつかは、EUのプライバシー規制に準拠していないため、EUからアクセスすることができないようになっている。

日本を含む非中国の市民は、(TikTokの)データが中国のセキュリティサービスと共有されないことを合理的に特定する必要がある。EUとアメリカとの間の個人情報保護協定のような規制を、もし中国が受け入れることを望んでいない場合は、中国企業は海外でデータ収集を行うビジネスをするべきではない。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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林 哲矢 東洋経済 記者

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はやし てつや / Tetsuya Hayashi

日本経済新聞の記者を経て、ハーバード大学(ケネディスクール)で修士号。『週刊東洋経済』副編集長の後、『米国会社四季報』編集長。

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