中毒者続出の動画アプリ「TikTok」は安全か 中国政府が個人情報にアクセスできる?

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――TikTokの世界的かつ急速な普及に警鐘を鳴らしています。何がリスクなのでしょうか?

ソーシャルメディアアプリは、個人情報の収集をビジネスモデルの基盤としている。ユーザーの属性や傾向、嗜好を知れば知るほど、個人に最適化されたコンテンツや広告を提供できるようになる。それがソーシャルメディアの収益の源泉になっている。

TikTokもその例外ではない。TikTokの勝利の方程式は、AI(人工知能)を基盤にした高度なシステムで「次にどの動画を見るか」を推奨し、ターゲティング広告に誘導することにある。この行為自体はユーザーのプライバシーの権利が守られている限り、本質的に悪いとは言えない。

中国企業は政府に「ノー」と言えない

ただ中国では、「サイバーセキュリティ法」と「国家安全法」によって、中国政府が民間企業に対しデータアクセスを要求でき、企業は「ノー」と言えない。もし中国のアプリが世界中の国からユーザーデータを収集していれば、日本やEU(欧州連合)、アメリカと同程度の基準で個人情報が保護されているとは言えないのだ。

そして、もしそれが(TikTokのような)人気アプリであった場合、政府によるユーザーデータへのアクセスは前例のない規模の諜報行為になりうる。例えば中国政府は、ある特定の時間に多くの日本人、欧州人、アメリカ人がどこにいるか、友人が誰なのか、何をするのが好きなのか、個人的なメッセージで何を話し合っているかまで把握できる可能性がある。これらの情報を(諜報活動に)活用する可能性は非常に大きい。

とくにTikTokの場合は、すでにアメリカ軍の中でも人気になっており、TikTokには基地内や戦場での位置情報などが蓄積される。こうした情報に潜在的にアクセスできる中国政府は、一方で私たちのプライバシーの概念に背き、他方で国家の安全保障上のリスクになっている。

――あなたのリポートに対して、バイトダンスや中国の政府機関から反応はありましたか?

「ファーウェイの次はTikTokか?」と題した、環球時報のオンライン版記事

報告書を発表してすぐに、中国のグローバル・タイムズ紙(党機関紙である人民日報系の「環球時報」)はいくつかの批判的な記事を出した。(海外向けの)英字版では批判がまだ控えめだったが、(国内向けの)中国語版では、私とPIIEの両方に対して非常に強い表現で攻撃してきた。

バイトダンスからは電子メールで「ユーザーデータは中国に送られていない」とPIIEに文章が届き、私たちは報告書にその内容を注記した。

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