子供が進級したら死亡保障額を見直す良い機会 「かけすぎ生命保険」をスリム化する見直し術
まずは会社からの「死亡退職金」。金額は会社の規定や在職年数などによって異なりますが、大島さんの勤務先の場合、40歳時に亡くなると1000万円程度が支給される見込みといいます。この死亡退職金は一時的なお金ですが、その後、継続的に入ってくるお金もあります。公的年金からの「遺族年金」です。
遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入している人が亡くなった場合、その人によって生計を維持されていた配偶者や子どもなどに支給されるものです。大島さんの場合、18歳未満の子(18歳になって最初の3月末を迎えるまでの子)が2人いますから、妻、子ども2人の世帯として、「遺族基礎年金」の基本額が78万100円、また加算額として子ども1人につき22万4500円が支給されます。合わせて122万9100円です(2019年度価額、以下同)。
さらに会社員である大島さんには、「遺族厚生年金」も支給されます。金額は厚生年金の加入期間や収入によって異なり、加入期間が長いほど、また収入が多いほど、額も多くなります。遺族厚生年金には「300月みなし」という保障もあります。加入期間が300月(25年)に満たなくても、300月とみなして計算されるルールです。1年加入したところで亡くなった場合も、25年加入していたものとして額が決まるのです。大島さんは加入期間が18年、年収は500万円。遺族厚生年金の額は約52万円となります。さきほどの遺族基礎年金と合わせると、年額で約175万円。月額にして約14万6000円です。
ちなみに、遺族基礎年金は18歳未満の子どもがいる配偶者、または子どもに支給されるもので、子どもが18歳になり最初の3月を迎えるまで支給されます。大島さんには子どもが2人いるので、下の子どもの長女が高校を卒業するまでが支給期間です(長男が高校卒業後は年間100万4600円/月額約8万3700円に減額)。長女の高校卒業後は遺族基礎年金がなくなりますが、代わって、妻が65歳になるまでは「中高齢寡婦加算」として58万5100円が支給されます。
子どものいない配偶者には遺族基礎年金は支給されませんが、夫の死亡時に妻が40歳以上の場合、65歳まで中高齢寡婦加算があります。ほかに、勤務先によっては、子どもが高校を卒業するまで育英年金が支給される例もあります。
教育費を計算し、不足する金額を生命保険で準備する
このように、大島さんが亡くなった場合、月額約14万6000円(長男の高校卒業後は月額8万3700円)が支給されることがわかりました。
結構、大きな額ですが、大島さんは「それでは生活できない」と言います。たしかに妻と子ども2人が暮らすには十分ではないかもしれません。とはいえ、全然足りない、というほどでもありません。なぜなら、大島さんが亡くなると、住宅ローンの返済がなくなるからです。大島家では毎月10万円の住宅ローンを返済中ですが、大島さんの死亡後は「団体信用生命保険(団信)」によって住宅ローンは完済されます。返済の必要はなくなり、住居費はマンションの管理費など月3万円で済むのです。
食費5万円、光熱費2万円、住居費3万円、通信費2万円、その他5万円で、毎月の生活費は17万円とすれば、月約14万6000円の遺族年金でかなりカバーでき、不足額は3万円弱。教育費、衣服費、家電の買い換え費用、冠婚葬祭費などは難しいとしても、妻がパートに出れば、基本的な生活費はある程度賄えそうです。
ただし、子どもが高校を卒業すると、遺族基礎年金の支給はなくなり、遺族厚生年金のみになります。子どもの生活費は大学卒業までの分を用意するのが基本であり、妻の収入などでカバーできるかも、考える必要があります。多額の金融資産でもない限り、生命保険は不要ということにはなりません。生活費とは別に、子どもの教育費が必要だからです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら