5月にも東証上場、動き出す「中国ETF」の実力度 人民元高観測の中で投資チャンス拡大へ

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中国は日本の後を追って少子化・高齢化に直面することが確実だが、公的な年金制度などの整備は途上にある。そのため国民が老後に備えた資産を形成するための手段を整備せねばならない。ETFの普及などもその一環で、日本側には「中国ETFを通じて、日本の投資家に中国の資本市場に親しんでほしい。そこから、個別株への関心を持ってくれればいい」(東洋証券の桑原理哲社長)といった期待がある。

もともと日中の金融協力は2011年12月の北京での首脳会談で合意されたものだったが、その後の日中関係の悪化で停滞していた。4月22日のフォーラムに参加した日本政府の関係者は「十年来の悲願がかなった。中国の対外開放が進む中で、日中の金融協力はグローバル金融市場のためにも重要だ」(金融庁総合政策局の柴田聡参事官)との感慨をもらした。

日中関係改善で動き出す金融協力

日中関係の改善によって、両国の金融協力はようやく動き出した段階だ。フォーラムでも日本側からは「英文開示を徹底するなど情報開示の質を確保してほしい。投資の回収など越境投資のルールを整備することも重要だ」「アメリカや日本の株価が2倍になることはないが、中国ならありうる。しかし、日本の投資家は尖閣問題で中国を敬遠するようになった。和解を進めることがすべての基本だ」といった率直な声も聞かれた。

中国の証券行政を担う中国証券監督管理委員会の方星海・副主席は「日本には中国のような収益性の高い市場への投資が必要だ。また中国は日本のような安定した市場に投資することでリスク分散をする必要がある」と語る。4月15日の日中外相会談で、両国は「日中関係はすでに正常な軌道に戻った」という認識で一致した。加えて人民元レートの先行きが安定しているなど、日中の投資環境は従前より大きく改善した。

中国では間もなく、上海証券取引所に「科創板」が新設される。ハイテクやバイオ関連企業などを中心とする新市場で、ナスダックのような登録制を採用する。習近平主席肝いりの政策とあって中国での投資家の関心は極めて高く、やや過熱気味の気配もある。まだまだ発展途上の中国の資本市場のリスクとチャンスをどう見極めるか。日本の投資家にとって今年は大きなエポックになりそうだ。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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