通信制高校は、「不登校の受け皿」だけじゃない 答えは、高校初のeスポーツコースにあった

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実はeスポーツコースも、このような「引きこもり、不登校などの生徒をサポートしたい」という思想から設立に至っている。「eスポーツを採用したのは、通信制と相性がよく、世界に出て活躍する人材を輩出したいという思いがあったから。ただしいちばんの目的は、不登校や引きこもりの生徒にとって、eスポーツが学校に行ってみよう、社会に出てみよう、というきっかけになるのではないかということだった。この点は取材で毎回メディアに伝えているのだが、なかなか記事にしてもらえていない」と福田部長は強調する。

エイベックスと連携した「通学制パフォーミングアーツコース」ではダンス漬けの3年間を過ごせる。こうした他校との連携は積極的に進めていく考えだ(写真:ルネサンスアカデミー)

今後もルネサンス高校は生徒の意欲を引き出すような専門コースを広げる考えだ。すでに多くのダブルスクールコース(他校と連携したコース)があるが、4月にはエイベックス・アーティストアカデミーと連携した「通学制パフォーミングアーツコース」も始まった。ダンサーやアーティストを目指すプログラムで、コースにおけるレッスン以外に、エイベックスのダンスレッスンが受け放題となる。将来的に、エイベックスに所属してアーティスト活動ができるチャンスがあり、ダンスインストラクターなどの資格獲得も可能なコースだ。

専門的な学習・活動を行う生徒は徐々に増えている。アイドルやモデルなど芸能活動をする生徒をはじめ、ゴルフなどのスポーツ選手、サッカーやバレエなどで海外留学するケースもある。卒業生では、史上最年少で女子プロゴルファーとなり、全米女子オープン選手権にも出場した畑岡奈紗選手が有名だ。幼少期から長期間のトレーニングが必要とされる、芸術・スポーツ分野を目指す生徒はもちろん、将来の夢が明確な生徒にとって、通信制高校は有力な選択肢なのだろう。

「通信制高校こそ、積極的な選択肢だ」

ルネサンス・アカデミー社長でルネサンス高校校長でもある桃井隆良氏はこう分析する。「今の通信制高校は、不登校や高校を中退した生徒の受け皿であり、早くやりたいことを見つけた生徒の受け皿でもある」。かつては勤労学生のための高校だったが、いじめや不登校が問題になり始めた1980年代ごろから役目が変化、現在は積極的な選択肢の1つになりつつあるというわけだ。

ルネサンス高校の桃井校長。「生徒の学力をAIが判断し課題が変わるような個別対応を強化する。普通高校は将来、個別学習が主流になっていくのでは」と展望を語る(記者撮影)

「高校ぐらいからやりたいことを始める仕組みが今の世の中には合っているのではないか。われわれは若い人の応援団。生徒には何かやりたいことを見つけ、身につけてほしい。ゴルフでもeスポーツでも、一生懸命努力して何かをやり抜くことができれば、その経験はほかの分野に進んだとしても必ず役に立つからだ」(桃井校長)。

新コースの具体的な構想も進んでいる。スクーリングなどを行う茨城県久慈郡大子町の本校周辺は、コメやリンゴ、コンニャク、軍鶏などの特産品があり、林業も盛ん。そこで地の利を生かし、地元と連携した農林業のコースができないか、準備を進めている。さらには長期の企業インターンなども視野に入れる。就業体験のように数日のプログラムではなく、半年ほど企業で働く仕組みを作れないか、こちらも模索中だ。

横を見れば、カドカワによる通信制高校「N高等学校」(2016年開校)などもプログラミング教育やライトノベル講座といった新機軸を打ち出し、生徒を集めている。生徒が仕方なく嫌々通うのではなく、積極的に前向きな理由で選ぶ場所として、通信制高校は存在感を増すことができるのか。生徒を後押しする学びの形の進化は、まだまだ続きそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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