パラスポーツを全国小中高生が学ぶ授業の深み あすチャレ!Schoolの取り組みとは

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この「あすチャレ!School」が始まったのは2016年4月。「他人のことを自分ごととして考える心」「障がいとはなにか?」「可能性に挑戦する勇気」「『夢』や『目標』を持つ力」を、4つの学びとして授業の柱になっている。

2016年度は21都道府県116校、児童生徒1万8575人、2017年度は39都道府県263校、児童生徒4万2741人、2018年度は41都道府県296校、児童生徒4万6253人と年々開催校が増えてきている。2019年2月には47都道府県での開催を達成した。

講師には昨年4月から始めた永尾さんら、各競技経験者4人が派遣される。多くは専用の車で移動しているという。「2019年度は300校が目標。私も85、86校ぐらいは行きたいですね」と話した。

児童には車いすでの生活について「できないことはあります。階段は上れない。でもエレベーターがあれば、好きなところに行ける」と話し「障がいは工夫次第でなくすことができる」と説く。「眼鏡をかけている人は、見えるようにしている。歩けない人はいすに座っても動けないが、車いすなら動ける。体に障がいがあるということはどういうことか、考えてみてください」と優しく訴える。

人と人のつながりがあっての「バリアフリー」

パラリンピック開催決定を契機に、バリアフリーへの意識が高まっている。永尾さんは「ハード面では確かに高まっている。電車やバスやタクシーなども大事ですが、人と人のつながりがあってこそのバリアフリー」という。

授業の意義については「パラスポーツを通じて、その先の福祉、共生社会の実現に向けて、子どもたちの気持ちが変化してくれればいい」という。

小中学生にとっては、知らないことについての話や体験は、その後の振る舞いにつながる。感想を話した女子児童は「やってみておもしろいことが分かりました。(車いすの)生活は大変だと思った。授業で知ることができて、今までオリンピックだけ見ていたけど、パラリンピックを応援したい」と話していた。児童たちに響くものがあったのだろう。

「あすチャレ!School」はパラサポHPから実施を申し込める。

実施費用は1回3万円。2020年まで全国1000校での開催を目標にしている。日数や講師に限りがあるのは確かだが、小中学生のころにこうした授業を受けるのは「その先の未来」につながる。2020年以降も「その先」に向けた取り組みの大きな柱になりそうだ。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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