乗ったらわかる、横浜の「楽しいオープンバス」 「非日常」の目線だからこそ気づく街の魅力も

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実際、日本人であっても訪日外国人であっても、観光に充分な時間をとることができないケースは少なくないだろう。

例えば中華街で食事をするスケジュールを組んでいても、その前後に時間がないし土地勘もない。交通手段もバスを乗り継いでとなると面倒だから……と結局観光を断念してしまう。

でも、このオープントップバスならばわずかな隙間時間を利用して一通り巡ることができる。観光の最後のひと押し、といった塩梅だろうか。

外国人観光客が狙いだが…

京急や横浜市は、どうやら訪日外国人を主なターゲットとしているようだ。実際、京急はGPSの位置情報を活用し、日・英・中・韓の4言語でオープントップバスのコース上の観光スポットを音声で案内するアプリの配信を始めている。確かに外国人の多い街だからこの狙いもよくわかる。

だが、少し目線を変えてみれば、これは日本人観光客はもとより、近郊に住んでいながら横浜の名所巡りはあまりしていないという人にこそピッタリの観光ツールと言えるのではないか。

オープントップバスの座席(筆者撮影)
横浜ベイブリッジも約3.5mの高さから眺めるとより迫力がある(筆者撮影)

もちろん東京発着の「はとバス」にも横浜を回るツアーがあるけれど、今回デビューしたオープントップバスなら、時間をさほど使わずに済むというのも大きなメリットのひとつだ。

気軽に乗車できるオープントップバスは、横浜のことを知っているようで知らないという日本人にも、いつもと違う目線で街の魅力を再発見してもらう絶好の機会になる。地方在住の友人を手軽に案内するときなどにもちょうどいいツールだ。

そしてこの“名所リピーター客”となって横浜を再訪する人が増えれば、周辺エリアのさらなる活性化につながり、都心と横浜を結ぶ京急の利用者拡大にも貢献できる。そうして考えてみると、単に「インバウンドターゲットの観光ツール」にとどまらない何かがありそうだ。

京急グループは今年秋に本社機能を東京・高輪からみなとみらい21地区に移転する予定。街行く人の目を引くオープントップバスには、先のベイエリアで“京急電鉄”の存在感を高めようという狙いが潜んでいるのかもしれない。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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