令和グッズの販売「違法」と「合法」の微妙な差 菅官房長官の掲げた「令和」の引用は違法か

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■著作権法の観点からは問題ないのか。

「表現内容によっては、著作権法で保護される可能性があります。

元号そのものを表現したものは、多くの場合、創作性(独創的であったり、クリエイティブだと評価できること)を欠き、著作物でないと判断されると考えます。

なお、書体、字体も、多くの場合、著作物ではないと判断されます。一方で、フォント(書体をデジタル化して、表示や印刷などを可能にしたもの)については、著作権法により保護される場合があります。ただ、これは、元号の記載自体が保護されているわけではありません。

したがって、単に『令和』と記載したグッズが販売されても、通常は著作権侵害の問題は生じないと考えます」

注意すべきケース

■ただ、気になるのが、菅官房長官が掲げたものとまったく同じものを使用するケースなのだが、どう考えればよいのか。

「このケースについては、慎重に考える必要があると思います。

具体的には、菅官房長官の掲げた文字を使用する際、多くの場合は、テレビ中継映像のキャプチャー画像や、カメラマンの撮影した静止画写真を利用すると考えられます。

そして、映像(多数のコマ=写真の集合)のキャプチャー画像も、静止画写真も、『写真』という著作物(著作権法10条1項8号)に該当すると考えられます。そうすると、この写真の著作物を著作権者であるテレビ局や撮影者の許諾なしにグッズ化することは、厳密にいえば複製権(著作権法21条)などの侵害にあたる可能性があります。

ただ、著作権法上の『引用』(著作権法32条1項)に該当する場合は、侵害行為となりません。引用が認められる要件は、いくつかありますが、そのうちの1つとして、引用部分とそれ以外の部分の『主従関係』が明確であることが必要です。

しかし、元号のグッズを販売するに際して、多くの場合、元号発表の写真等を『従』として使用されていると評価するのは難しいと思われます。ですから、仮に出所を明確に示していたとしても、『引用』の要件を満たさないケースが多いと思われます。

以上の理由から、『令和』グッズに菅官房長官の掲げた文字をそのまま使用する際は、慎重になるべきだと考えます」

※佐藤弁護士の見解は、所属する組織の見解を示すものではありません。

佐藤 孝丞(さとう こうすけ)弁護士
都内を中心に、企業法務一般、特に著作権・商標権・模倣品対応等の知的財産案件に注力。弁理士としても活動中。一方で、相続等のさまざまな案件を取り扱う。弁護士知財ネット会員。
事務所名:佐野総合法律事務所
事務所URL:https://sklaw.jp/

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