天皇譲位で「犯罪者の罪が軽くなる」は本当か 「恩赦」が市民に与える影響を考察
今年8月7日、毎日新聞は天皇の御代替わりにあたって、「政府が公務員懲戒の免除を検討している」と報じた。記事によると、来年5月1日に予定されている改元に合わせて行われるであろう「恩赦(おんしゃ)」とバランスを取るための措置であり、財務省の決済文書改ざんをめぐる佐川宣寿・前国税庁長官の減給処分も免除される可能性があるという。
恩赦を簡潔に説明するならば、政府が裁判ですでに確定している刑罰を特別な恩典によって許したり、軽くしたりすることである。1989年に昭和天皇が崩御した際の「大喪(たいそう)の恩赦」では、「公務員等の懲戒免除等に関する法律」と政令に基づいて、懲戒処分(免職・停職・減給・戒告)のうち、減給か戒告の処分者が免除対象になった。
だから今回も、佐川氏だけではなく、昨年の文部科学省による天下りあっせん問題を受けて処分された前川喜平・前文部科学事務次官についても、懲戒処分が免除される可能性がある。これに対して、菅義偉官房長官は、8月7日午前の記者会見で、「ありえない。明快に否定する」と述べ、即座に、しかも強く否定した。
もちろん佐川氏や前川氏の処分や、その免除について賛否はあるだろう。しかし、ここではその是非に踏み込むよりも、「恩赦や処分免除が、なぜ天皇の御代替わりに伴って行われるのか」という点について考察してみたい。
そもそも「恩赦」とは何か?
元検事の前田恒彦氏がヤフー個人の記事「恩赦と懲戒免除 なぜあるのか」でも整理しているように、「恩赦とは、特別な恩典として罪を赦(ゆる)すというもので、行政や立法といった裁判所以外の判断により、刑事裁判の内容やその効力を変更させたり、消滅させたりする制度」である。
恩赦は、アメリカや東南アジア諸国でも制度化されている。日本では、中国の制度を基にして始まっており、とりわけ、天皇の崩御に際して行われる事例が多かった。たとえば、『日本書紀』にも西暦487年の顕宗(けんぞう)天皇崩御の際に行われた恩赦が記載されており、1500年以上の歴史があると考えられる。
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