天皇譲位で「犯罪者の罪が軽くなる」は本当か 「恩赦」が市民に与える影響を考察

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日本国憲法が施行されてから昭和が終わるまでの約41年間には合計7回、平成の30年間では、昭和天皇の崩御、今上陛下の即位、1993年の皇太子徳仁親王殿下のご結婚に際して合計3回恩赦が実施されている。

刑法学者の植松正氏(1906-1999)は、こうした天皇の崩御を中心に恩赦が行われる習俗(しきたり)について、「喪主側が会葬者などに贈る供養の品に類するもの」(『法律のひろば』1989年4月号)とたとえている。

植松氏は、「社会的有力者の葬送の際に、その種の金品を貧民などに施してこれに恩恵を与えることと同趣旨のものと解すべきだろう」とも述べており、いわば、恩赦は権力者である天皇や政府からの「香典返し」だと言えるかもしれない。

「恩赦」が今も行われる理由

では、なぜ今も恩赦が行われる見通しなのか。もともと恩赦は、天皇の御代替わりを祝福するためだけに行われているわけではない。それよりも、より刑事政策的な観点から行われている。

恩赦は、日本においては恩赦法(1947年施行、2013年改正)に基づいて行われる。管轄は法務省保護局に属しており、そのウェブサイトには、「なぜ恩赦は必要なのですか?」とのQ&Aがある。そこでは、恩赦は、「有罪の言渡しを受けた人々にとって更生の励みとなるもので、再犯抑止の効果も期待でき、犯罪のない安全な社会を維持するために重要な役割を果たしている」と位置づけられている。「犯罪のない安全な社会」は究極的な目標だとしても、それを目指す手段として恩赦が用いられているわけだ。

法務省のウェブサイトでの説明と同じように、政府は、これまで「画一的になりがちな法律や裁判の欠陥を補うため」と説明してきた(朝日新聞1993年5月14日朝刊より)。

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