天皇譲位で「犯罪者の罪が軽くなる」は本当か 「恩赦」が市民に与える影響を考察
産経新聞は、恩赦を「受刑者らも国家の慶弔に喜びを分かちあったり冥福を祈ったりするのが目的」と解説している。前出の植松正氏による比喩のとおり、恩赦とは「喪主側が会葬者などに贈る供養の品に類するもの」、すなわち、国家からの「香典返し」や「引き出物」なのかもしれない。
一般市民への影響はどれくらいか?
こうした観点から、天皇の御代替わりとなる来年の改元でも、これまでと同様、恩赦が行われる可能性は高い。とりわけ、今回は崩御を伴わない御代替わりのため、より「国家の慶事」としての側面が強く、その「喜びを分かちあう」ことを重視できる。
では、一般市民にはどういった影響があるのか? 佐川氏や前川氏の処分が軽減されたり、免除されたりするかは不明だが、少なくとも、これまでの慣例にならった形での恩赦は実施されるとみられている。
たとえば、公職選挙法違反によって公民権を停止されている人々への恩赦もその一例だ。恩赦によって、選挙権が回復する可能性がある。また、減給中の公務員であれば、元の給与に戻るなどの影響も予想される。
ただし、巷間でうわさされているような、死刑囚の恩赦の見通しはないと思われる。再審請求の対象者も含めて、オウム真理教事件の死刑囚には、今年6月に2回に分けて死刑が執行されている。
ジャーナリストの斎藤充功氏の手掛けた近著『恩赦と死刑囚』は、恩赦によって「死刑から無期懲役へと減刑された、数奇なる死刑囚たちの足跡を追った」貴重な労作である。斎藤氏の調査によれば、戦後、「恩赦」によって罪一等を減ぜられて「無期懲役刑」に減刑された死刑囚は7人だという(ただし、実数は「はっきりしない」とも斎藤氏は語っている)。
しかし、今回のような「国家の慶事」にあたって、死刑囚が減刑されて物議をかもす事態は、政府が最も避けたい展開であり、死刑からの減刑はないと予測される。
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