「ハンバーグに卵入れない」斬新レシピ本の中身

定番料理の作り方覆す「新しい料理の教科書」

ハンバーグには卵は入れない、タマネギは炒めずに入れ、焼くときはへこませない――。樋口氏はこれまでの常識を覆す(写真:樋口直哉氏提供)

ハンバーグには卵を入れず、練らない。鶏の空揚げは冷たい油から揚げる――。定番料理の作り方を斬新に見直したレシピ本『新しい料理の教科書』が話題を呼んでいる。今年1月に発売されてから、すでに4刷されている。目下、レシピ本は変革期を迎えており、近年はだしを取らないスープや握らない「おにぎらず」など、従来とは異なる手順の料理が数々紹介されてきたが、その中にあっても『新しい料理の教科書』は異色といえる。

同書で紹介されているのは、ハンバーグや豚のしょうが焼き、鶏の空揚げ、プリンといった定番ばかり。しかし、すべてのレシピに長い解説文がつく。その文章が伝えるのは、常識を覆す新しいやり方で、調理科学の知識を駆使してなぜその方法なのかまで説明されている。

今はハンバーグに卵を入れる必然性がない

例えばハンバーグ。定番のレシピでは、ひき肉に塩コショウ、生卵、牛乳でふやかしたパン粉、刻んで炒めたタマネギを加えてよく練り、丸めて真ん中をへこませてから焼く。同書では、まず卵を入れない。理由は「昔、流通していたひき肉が、鮮度の悪いものばかりだったので、不足した結着力を補うために入れていたのでしょう。現在、流通しているひき肉であれば卵を使う必要はありません。逆に卵を使わないことで肉の味がしっかり出ます」とある。

そしてあまり練らない。粘りが強くなると、焼いたときに旨味のもとである肉汁が出ていってしまうからだ。ほかにも、生のタマネギを加えてパン粉を牛乳なしで加え、真ん中をへこませず滑らかなままにして焼くなど、すべての手順が従来と異なり、その理由が説明されている。分量とプロセスを書いたレシピのページにたどり着くのは、7ページにも及ぶ解説の後だ。

なぜこのようなレシピ本を書いたのだろうか。従来のプロセスを疑い、新しいやり方を考案する発想の転換は大変なことに思えるが、著者で料理家の樋口直哉氏は事もなげに「料理人的発想なんです。僕はもともとコックなので、コックは『どうやったらおいしくできるのか』と自分なりのやり方を考えるから」と話す。

『新しい料理の教科書』に載っているのは、しょうが焼きやオムレツ、親子丼など定番料理ばかりだ(写真:樋口直哉氏提供)

新しい作り方の考案方法は2つ。「1つは仮説を立てて実験する方法。ハンバーグなら卵を入れる場合と入れない場合で作ってみる。タマネギを炒める場合と炒めない場合で作って検証する。もう1つは調理科学の論文や書籍を読んで研究する。この本では、調理科学と料理レシピの世界をつなげたかったんです」と話す。

「新しい料理を考えるのは簡単。それより、すでにあるやり方を精査して今の時代に合ったやり方に変えていくほうが面白い」と考えた。理由は2つある。1つは、インターネット上にあふれる玉石混交のレシピ情報を整理したかったこと。「あるサイトはフライドポテトを作るのに、長く水に晒す、あるサイトは片栗粉を振る、別のサイトは茹でてから揚げる。どれが本当かわからない」(樋口氏)。

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