カー用品2強が失速! 成熟市場でも地場流通は元気、大手の誤算とは《特集・流通大乱》

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カー用品2強が失速! 成熟市場でも地場流通は元気、大手の誤算とは《特集・流通大乱》

2008年、タイヤ、ナビゲーションなどを扱うカー用品店業界にも“地殻変動”が生じていた。

業界首位のオートバックスセブン、2番手のイエローハット。数少ない全国チェーンとして、業界の顔でもある大手2社が、足並みをそろえるように同族経営から離脱、生え抜きのトップに社長を交代させたのである。

うち1社の幹部は打ち明ける。「うちの前社長は創業家2代目だった。社内からは経営能力がないと見なされながらも、父親の威光があり、これまでアンタッチャブルな存在だった。しかし株価も急落した現在、もはや体制の刷新は不可避だった」。

下の図にあるとおり、オートバックスとイエローハットの営業利益は、大きく落ち込んでいる。09年3月期の営業利益見通しは、オートバックスは2年前と比べて3分の1に、イエローハットに至っては2期連続の営業赤字が濃厚だ。

矢野経済研究所の推計によれば、国内のカー用品市場は05年以降、1~2%の微減傾向で推移し、市場成熟化は鮮明だ。反落の要因として大手2社が口をそろえるのが、「カーナビ市場の環境悪化」。カーナビはタイヤと並ぶ主力商品であるだけに、業績に与える影響は大きい。

その“環境悪化”の一つに、自動車メーカーによる純正ナビ装着が進んでいることがある。10年前はカーナビ販売台数の約5割がカー用品店など市販経由だったが、07年にはその比率は3割台に下がった。反面、メーカー純正品の装着比率は上昇を続け、04年からは市販品のシェアを突き放している。「国内自動車需要が低迷する中、メーカー側もオプションで釣る動きを活発化させている」(カー用品業界関係者)。

単価下落も響く。従来の10万~20万円以上する商品から、1台5万円前後と破格の「ポータブルナビ」に消費者の嗜好が変化しているのだ。安くなった分、数が出れば問題ないが、ポータブルナビはヤマダ電機など大手家電量販店も力を入れている。結局、1台当たりの粗利減少を販売数増で補完できなかった。

拡大戦略の死角 本業で足をすくわれる

とはいえ、低迷の原因をこうした市場環境のみに帰することはできない。

大和総研の杉浦徹アナリストは、「市場成熟化の中、本来は既存店舗のローコストオペレーションに傾注すべきだった。だが大手2社は事業多角化、店舗大型化など逆に拡大戦略をとってしまった」と指摘する。

たとえば、オートバックスが最も注力してきた拡大策に海外事業がある。アジア、フランス、米国の3極でカー用品店を営んでおり、M&Aを積極活用して店舗網を拡大してきた。06年にフランスで6店、07年にはアメリカで89店の買収を実施。さらなる買収にも意欲を燃やしていたが、主要株主から批判が噴出。M&Aの資金をめぐって資金調達先とのトラブルも発生し、現在その熱は急速に冷めている。

今も海外店舗の経営は軌道に乗る兆しがない。07年度の海外事業の経常赤字額は28億円、08年度はさらに膨らむ見通し。イエローハットも同様に海外強化を進めるが、赤字脱却の気配はない。そのうえ、08年1月には「社会貢献」的な新規事業と称し、本業低迷の中で毛色の違う介護用品販売に参入した。

大手2社は拡大策に目を向けるあまり、既存の国内店舗の改革、つまり運営効率化や品ぞろえ見直しなどがおろそかになった感は強い。

  

地方には好調企業も 成熟市場を生き抜く秘訣

実際、地方の中小カー用品店チェーンの中には、この逆風下でさえ、業績を伸ばしている会社がある。

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