東大生が教える「文章に自信過剰な人」の盲点

うまく書けたはずなのに「伝わらない」ワケ

もしかしたら①は、この本の内容を知っている人にとっては、②よりも「いい文章」なのかもしれません。

「この本に書いてある感情をまとめると、リスペクトとコンプレックスだ!」と、「感情」の中身をまとめています。その点②は、「複雑な感情」と逃げてしまっています。

でも、「リスペクト」とか「コンプレックス」とか言われても、本を読んでいない人は何が言いたいのかピンときませんよね? この文章だけを読んだ人は「うーん、何言ってるの?」と首を傾げてしまうことと思います。

そりゃ、辞書で調べたら「リスペクト」「コンプレックス」の意味はわかるでしょうし、調べずともこの言葉の意味がわかる人も多いと思います。しかし、少なくとも大多数の人にとって毎日使うような言葉でないことは確かです。

それにどちらも抽象的な概念で、本当に理解するのは難しいです。それこそ、本を実際に読んでみないと、この言葉を使っている理由はわかりません。それだったらもう、②のように「複雑な感情」と言われたほうが理解しやすいと思います。

読者の中で「いちばんわかっていない人」に向けて書く

人は文章を作るとき、どうしても、「わかっている側」に立って書いてしまうことが多いです。

「これくらいのことなら、読者だってわかるだろう」「説明しなくても、このレベルのことなら理解してくれるはずだ」

そういう前提に立って文章を作ってしまいがちなのです。でも、今の本紹介の文のように、「読者はきっとわかってくれる」と過信していると、「読者にとっていい文章」なんて作れっこないのです。

「でも、文章には『ターゲット』というものがあって、レベルが高い『わかっている』人に向けて文章を書くことだってあるじゃないか!」と思う人もいると思います。それはまったくもって、おっしゃるとおりです。

しかし、その「ターゲット」の中の、いちばん下に合わせないといい文章にならないのです。例えば一概に「社会人」といっても、会社に入って30年目のベテラン社会人も、入社1年目の新人もいるのです。「社会人ならこれくらいわかるだろう!」といっても、ベテランに合わせて話していたら新人は置いてきぼりにされてしまいます。逆に、新人に合わせて話しても、ベテランが「わからない!」となることはないと思います。

真に気をつけるべきは、「社会人」と考えたときに、ベテランのことばかり想像して文章を書いている可能性があるということです。書き手にそういう「わかってくれるだろう」という甘えがあると、文章は伝わりにくいのです。

ちなみに東大というのは本当に厄介な大学でして、「え!? これ採点してるのは大学の超頭いい教授なんだから、これくらいわかってくれるでしょ!?」みたいな「書き手の甘え」をまったく容赦してくれません。そういう甘い文章は軒並み0点にされてしまうのです。

「わかってくれるだろう」

この甘えは、「読者にとっていい文章」を書くうえで非常に大きな落とし穴なのです。

次ページ文章から「甘え」を取り除く方法
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