「K-POP」が牽引するYoutubeヒットの舞台裏 アジアからトップユーチャーバーが続々誕生

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そして、冒頭のK-POPドキュメンタリーもスマッシュヒットを飛ばしています。

今、最も注目を集めている韓国のヒップホップアイドルグループBTSこと、防弾少年団がアメリカを含む2017年に行ったワールドツアーまでの準備を追ったドキュメンタリー『Burn the Stage(バーン・ザ・ステージ)』が1月18日に公開され、視聴回数を伸ばしています。BTSはこれまでもYouTube上で記録を作り、2017年12月にリリースされた楽曲『DNA』のミュージックビデオはYouTube上で6億視聴ビューにも上りました。

YouTubeプレミアムのオリジナルにあるK-POPアーティスト番組は現在、BTSのみですが、韓国の音楽業界ではプロモーション利用にYouTubeを使うのは当たり前。

東方神起、TWICE(トゥワイス)、IZ*ONE(アイズワン)、SHINee(シャイニー)、EXO(エックソ)といったトップアイドルグループも公式ミュージックビデオのファースト視聴はYouTubeを使った戦略が取られているそうです。「韓国で次から次へと売れるアイドルはYouTubeから生まれています。韓国の音楽業界にとってYouTubeは欠かせないものになっています」(パーク氏)。

YouTubeプレミアム無料化の狙いとは?

こうしたK-POP人気がYouTubeにおけるアジアコンテンツのヒットの要因を作り出しているとも言えますが、K-POPだけに限らないようです。なぜ、今アジアが熱いのか? この理由の答えには、YouTubeが展開されているそれぞれの国でローカルのユーチューバーを抱えていることが大きいようです。

パーク氏は「広い層のオーディエンスを獲得していくために必要なことは、ユーチューバーを支える熱いファンコミュニティーを作り出すことです」と話していました。つまり、アジアで今、常連のファンを持ったユーチューバーの数が増えていることが、「アジアが熱い」につながっているというわけです。

とくに、この3年でインドやタイ、インドネシアからトップユーチューバーが大きく育っていると言います。日本の事例も挙げ、250万クラスのチャンネル登録を持つVチューバーが人気を集めていることを紹介していました。

「アジア各地でチャンネル登録者数がミリオンクラスのユーチューバーがいます。今朝、チェックしたら、1000万を超えているインドのユーチューバーがいました。インド音楽などが人気を集めています。インドでは英語で展開されているものも多く、グローバルにも広がりやすい。

日本や韓国はローカル言語で展開されているものが大半を占めます。もちろん字幕対応も可能ですが、タイトルなどに英語を加えることで、もっと広がっていくと思います」(パーク氏)。

このアジアで育っているトップユーチューバーがYouTube全体の視聴者層の底上げに寄与していることから、実はYouTubeはサービス戦略の方向転換も進めています。すでに一部報じられているように、YouTubeプレミアムを2020年に無料化していく計画があるのです。

パーク氏はこれについて明確には言及しませんでしたが、「ユーチューバーの強化戦略の基本的な部分は完了したところです。プラットフォームとしての魅力をさらに高めていくために、最新テクノロジーを駆使し、ネット配信サービス競争の中で選ばれるために、われわれは次のステージに向かう必要があります」と話していました。

これはディズニー、アップル、NBCユニバーサル、アメリカの通信大手 AT&Tが動画配信サービスに参入することでますます競争が激化していくことを予想し、それに対抗する施策でしょう。各動画配信サービスがコンテンツの数やクオリティー、ネームバリュー、制作費といった差別化を図るなかで、ユーチューバーというコンテンツを作り出す「人」を世界規模で大量生産することに舵を切るということになります。

有料化から無料化によって大きな収益減が見込まれますが、その先にはV字回復を描く計画があるのかもしれません。そのカギはアジアで育つユーチューバーが握っているはずです。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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